この3人が来季もメジャーでプレーできる可能性はどの程度あるのだろうか?
■イチロー:マーリンズ残留の可能性が高いが…
マーリンズとの契約では、'17年に関しては球団が、
(1)年俸200万ドル(2億円)で再契約
(2)違約金(推定40万ドル=4000万円)を支払って契約見送り
という二つの選択肢から選べることになっている。
今季、イチローは終盤息切れしたとはいえ8割以上の試合に出場。打撃成績は打率2割9分0厘、出塁率3割5分4厘(9月27日時点、以下同)と見事なものだ。守備範囲の広さや肩の強さも健在で、本人も50歳までやる気構えでいる。
メジャーでは高年齢の選手は冷遇されるため、どんな名選手でも野手の場合、40歳を超えると現役を続けるのが困難になるケースが多い。だが、マーリンズだけは、若いレギュラー陣の中に実績のあるベテランを1人組み入れて「お手本」「相談役」として活用する方針を取っているので、高年齢も大きな支障にはならない。
そのため、地元メディアや米国のスポーツメディアは、マーリンズが「年俸200万ドルで契約する」というオプションを選択する可能性が高いと予測している。
しかし、残留が100%確実というわけではない。
考えられるリスク要因の一つは、マーリンズが4人目の外野手を「お手本になるベテラン」から「パワーヒッター」に転換する可能性があることだ。マーリンズは今季後半、得点力がワーストレベルまで低下。ベクトルを大きく変える可能性は十分にある。
もう一つのリスク要因は、9月25日に大エース、ホセ・フェルナンデスがモーターボート事故で急逝したことだ。
フェルナンデスはチームでただ1人、大きな勝ち越しを見込める投手だったため、マ軍は今オフ、その代わりとなる投手の獲得が至上命令になっている。それに加え、マ軍は故障の多い主砲スタントンをトレードで放出したがっていると伝えられており、オフに大掛かりなトレードが複数敢行される可能性がある。そうなった場合、イチローは「4人目の外野手」という立場であるため、弾き出される可能性がある。
■青木宣親:4人目の外野手として他球団と契約か
マリナーズのディポートGMは青木を残留させる気がないようだ。契約には「今季480打席をクリアすれば、'17年は年俸550万ドルで再契約」という条項があり、普通に使われていれば9月上旬には自動的に再契約となっていたはずだ。しかし、同GMの青木への評価は低く、6月下旬からひと月ほどマイナー落ちさせただけでなく、メジャー復帰後は好調だったにもかかわらず8月27日から10日間、再度マイナー落ちさせて、480打席をクリアできないようにした。
そのためマリナーズ残留の可能性は遠のいている。しかも、メジャーでは30代半ばになった野手は冷遇され、傑出した数字を出している者以外はレギュラーの座を維持できなくなる。青木は今季、シーズン前半は打率2割4分5厘でメジャー平均を下回ったが、後半は快調にヒットを放って打率は2割7分3厘、出塁率は3割3分9厘だ。これは「中の上」レベルの数字であり、30歳ならレギュラーの座を十分維持できる。
しかし、35歳ではそれが難しくなる(青木は来季35歳)。守備力もやや低下しているので、青木には4人目の外野手として他球団と契約する道しか残されていないように見える。
だが、ニーズがないわけではない。青木の最大のウリは、高い出塁率を期待できることと、三振が非常に少ないことだ。毎年「中の上」レベルの打率を出せることも大きな長所だ。
そのため「低コストで雇える出塁率の高い外野手」を補強したいチームが200〜300万ドル(2億〜3億円)の年俸で獲得に乗り出す可能性が高い。想定される球団はアスレチックス、レイズ、ホワイトソックスなどだが、古巣ブリュワーズも若手が伸び悩んでおり、出塁率の高いベテランの獲得が急務になっている。オファーがあれば、青木は多少年俸が安くてもこちらを選択するのではないだろうか。
■川崎宗則:内野陣が若い弱体球団とマイナー契約
川崎は今季メジャーでの出場機会が激減し、シーズンの大半を3Aでプレーした。そうなった最大の要因は、カブスというメジャーで最も内野陣が充実したチームと契約したことにある。来季も米国でのプレーを望むなら、内野の陣容が手薄で、セカンドかショートにルーキーが抜擢されている球団と契約すべきだろう。1点が欲しい場面で役に立つ、小技のうまいユーティリティーを欲しいチームもある。狙い目はエンジェルス、ホワイトソックス、レイズ、ブレーブスあたりだ。
ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は大リーグ関連の記事を各媒体に寄稿。日本人大リーガーにも愛読者が多い「メジャーリーグ選手名鑑2016」(廣済堂出版)が発売中。