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中国の爆買い終了で窮地 地方空港サバイバル戦争の行方

 主に中国観光客の増加で勢いを取り戻しつつあった地方空港が再び窮地に追い込まれている。爆買いツアーの減少で、地方空港、主要空港間でサバイバル競争が起き始めているというのだ。
 まずは、地方空港の現状だ。
 「産経新聞が今年1月、各空港に独自に聞き取り調査したデータに基づき、『国が管理する空港以外、地方空港の赤字額が平成25年度で総額約155億円超に達している』と報道した。バブル期、“一県一空港”と収支の見通しも甘いまま作られた地方空港が、海外からの観光客が2000万人に増加した今も運営が苦しいというもの。加えて今年夏以降、さらに情勢が悪化しているのです」(航空アナリスト)

 その様は、地方空港の中では比較的好調と言われてている富士山静岡空港の苦境ぶりを見ても明らかだ。
 「'09年開港の富士山静岡空港は、東京-名古屋の中間点で富士山も近い。当初は、その立地のよさゆえ、多くの中国路線が相次いで就航した。爆買いツアーが、発着枠が少なく就航できなかった羽田、中部国際空港から静岡に集中したのです」(同)

 結果、2015年の同空港利用者は14万9473人増の69万8652人と急増。ところが今年夏以降、その情勢が一変したのだ。
 「9月に入ると中国東方航空の杭州線をはじめ、瀋陽線も運休。昨年9月末のピーク時は14路線もあった中国路線は、1年で3分の1の5路線に激減したのです」(同)

 静岡空港の中国路線が短期間に激減したのは、やはり中国経済の失速が最大の要因だ。さらに、日本側で羽田空港や中部国際空港の発着枠が大幅に増加したことも起因する。
 しかし、この状態に手をこまねいてばかりもいられない。静岡県が乗り出し、空港ターミナルビルを'18年には1.5倍規模に拡張する予定だという。
 「'20年の東京五輪を睨み、これまでのように東京、名古屋、大阪に行くためだけの格安空港から、富士山静岡をメーンにする滞在型観光地を目指す。今、JRや国交省に空港近接の新幹線駅を陳情しています」(地元政界関係者)

 インバウンド効果で比較的好調だったのは茨城空港(茨城県小美玉市)も同様。しかし、同空港も今、大きな岐路に立たされている。
 「'10年の開港当初は年間20万人だった利用者が、'15年度はついに55万人にまで伸びた。'15年に国内線で唯一就航していたスカイマークが破綻危機に陥りましたが、今日まで同空港を救ったのも中国、台湾などからの爆買いツアーです」(空港関係者)

 '15年7月、爆買いツアーの高まりに合わせ中国南方航空が深セン便、'16年1月に中国国際航空の杭州便、3月に台湾LCC、Vエアの台北便、3月には春秋航空が第2の路線として揚州を経由する成都便と、次々に就航した。その影響で、'15年度に外国人が茨城を訪れて周遊・宿泊したツアー数は前年度から約4倍増となった。
 しかし、それらが今年に入り一気に撤退。残った海外路線は茨城-上海便のみ。
 「これは中国経済減速と全国の空港がインバウンド客争奪戦で、着陸料の割引などの様々な競争が起きたためです。特に'15年4月、成田空港にLCCターミナルが完成し、茨城が特化してきたLCC路線を一気に活発化させたことが大きい」(前出・航空アナリスト)

 茨城空港をさらに追い詰めているのは、成田から北関東一帯に延びる東関東道路、常磐道につながる圏央道の千葉県側、約9.7キロの完成だ。
 「この開通により、車で水戸-成田の2時間が1時間に短縮された。成田のLCCと高速道路網の完成で、航空会社、利用者の成田シフトが加速したのです」(同)

 減少する中国人客争奪戦に主要空港が殴り込みをかける一方で、海外航空会社各社は1%でも搭乗率の高い空港を目指して日々進出撤退を繰り返す。これにより体力のない地方空港は悲鳴をあげる−−。
 だが、静岡同様、攻めの姿勢で打って出る空港も続出している。
 「仙台空港(宮城県)は、東急など7社による民営化で勝負をかける。有料だった屋上展望デッキを無料化、駐車料金の割引も行い、今後は約342億円を投じ空港ビルの改修を計画しています。航空会社負担の搭乗橋使用料を削減して新規就航を呼び込むほか、商業店舗の充実も図る」(同)

 そんな中、地方創生、海外観光客の大幅増を睨み、国交省も地方空港の国際線の新規就航や増便の支援に動く。自治体管理の空港に対して、着陸料引き下げ費用の助成や、熊本や那覇などの国管理空港ですでに実施している着陸料の実質無料化措置は、期間を1年から3年に延長する。
 全国97空港で生き残れるのは、果たしてどこか。

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