マンション業者としては一刻も早く販売してしまいたい。「キャンセル住戸なので貴重です。気に入っていただけたのであれば、他の人から予約される前に決めてください」と業者は購入を勧めてくるが、巨額の買い物をするわけで、要は“カネ”の問題。当然、値段交渉に入る。ここで気に止めておきたい事としては「100万円は、マンション業者からすればどうでもいい額」ということ。さらに「担当営業マンが提示してきた値引き額より多く値引かせることが可能」ということだ。
値段交渉は、担当営業マンとだけ交渉している間は、その手のひらの上で踊っているに過ぎない。「上司と相談する」と言ってからが勝負である。交渉の末、かなりの値引き額を引き出すことに成功したのだが、いくらかはここには書けない。というのは、パンフレット等に載っていない非公式な値引き販売を受けた場合、今回の取引について他言しないという誓約書を例外なく書かせられるのだ。既に正規価格で購入している人とのトラブルを防ぐためである。ブログやツイッターなどに書き込もうものなら、全額支払わされることとなるため注意したい。
そして、完成済み物件のもうひとつのターゲットはモデルルームに設置してあった家具や家電。一般的にこれらは、見栄えを良くするために良い物を置いているし、また、そのマンションにベストマッチする物を置いている。これが交渉次第でタダ同然で手に入る。余程の潔癖性の人を除き、この話に乗らない手はない。
購入が決まったら、いよいよ住宅ローンの手続きだ。今は簡単に誰でも住宅ローンが組める時代。頭金ゼロでも、条件によっては年収の10倍近くもの融資を受けることが可能。おおむね当該マンションの提携している銀行から融資を受けることになる。
さて、変動型の金利を確認すると、2.475%。しかも、優遇金利適用後だと0.875%にまで下がるという。どうなると“優遇”されるのかを確認したところ、「銀行の規定によるものです」とのこと。意味がわからないのでさらに聞くと、「夫婦共働きの場合はほぼ適用されます。また、聞いたことがあるような会社に勤めていればほぼ適用されます」だそうだ。実際のところローンを組む人の8〜9割が“優遇”されているそうで、事実上、金利は0.875%だ。
その銀行によると、独身で零細企業に勤めている人がハジかれることが多いらしい。統計上、夜逃げする可能性が高いのだとか…。なお、2.475%(35年)で3000万円借りると返済総額は約4400万円、0.875%(35年)だと約3400万円である。その差1000万円…。恐ろしい。
これで決まりかといえば、そうではない。銀行は金利で稼いでナンボの商売。代わりに、何かあったときにローン返済減免する保険のようなアノ手コノ手の商品への勧誘が始まる。決め台詞は「大きなローンを組んでいるわけですから、保険が必要です」。細々した契約を重ねていくと0.1%ずつ金利が上がっていく。最後には、変動型を申し込んだにもかかわらず、「今後、おそらく金利が上がります。変動型と固定型と半分にした方がよい」などと、そもそものローン申し込み内容の変更まで持ちかける発言まで飛び出した。
ほとんどお断りしたが、素直に銀行マンの言うことを聞いていたら、金利は結局“優遇”前の2%超まで上がっていただろう。何も保険に入っていない人は考える余地があると思うが、金利1%の恐ろしさを忘れてはならない。
というわけでマンションも決まり、住宅ローンも決まり、新生活がスタートした。思った以上に簡単にローンを組めたというのが実感で、“買い時”というよりは“借り時”というのが正直な感想。天変地異も金利の上昇も、誰かの言うことが当たったためしはないのだから“買い時”なんて待っていたら、あんなに高い買い物は一生できなかったかも!