『高砂 なくて七癖あって四十八癖』(宇江佐真理/祥伝社 1575円)
おそらく未来永劫、人類が男女間のトラブルを回避する真の解決策を編み出すことは決してないだろう。違う性別だからこそ惹かれ合う。そして、違うが故に反発し合う。深刻な犯罪事件にまで発展しなくとも、恋人同士、夫婦同士のすれ違いや憎悪は、当人にとってみれば大きな悩みの種である。むしろ、見知らぬ他人が引き起こした犯罪よりもずっと深刻な事態なのだ。
江戸時代を舞台にした本書の主人公は、日本橋掘留町で会所の管理人をしている夫婦、又兵衛とおいせだ。会所とは今に当てはめて言うと役所、役場のような建物である。町内の住民たちが滞りなく生活を営めるように公報や事務手続きの補助を行うことが彼らの主な仕事だが、持ち前の正義感が働くことも多く、人々が抱えている問題を解決するため一肌脱いだりもする。
収録されている全6話のほとんどが、夫婦の間に起こったトラブルを描いている。
「夫婦茶碗」では、もともと腕の良かった畳職人が酒に溺れるようになり、妻子に暴力をふるってばかりいる。「女丈夫」では、口入れ屋の商売を仕切る気の強いおかみに辟易していた夫が、突如行方をくらます。そうしたトラブルを解決すべく行動する又兵衛の姿は、まるで私立探偵のようだ。他人から見ればちっぽけでも、当人には深刻な問題に立ち向かう人情味あふれるヒーローなのだ。
(中辻理夫/文芸評論家)
◎気になる新刊
『週刊ランボルギーニカウンタックLP500S』(デアゴスティーニ・ジャパン/創刊号特別価格890円、第2号以降1790円)
毎週コツコツ組み立てるパーツマガジンに“伝説中の伝説”カウンタックLP500Sが登場! 1/8(全長約52センチ)スケールのド迫力に、ウォルター・ウルフもビックリ仰天だ!
◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり
「じぇじぇじぇ」が流行語大賞の最右翼と目されるNHK・朝の連続テレビ小説『あまちゃん』。すでに8月にはクランクアップされ、最終回は9月28日に放送される予定。ひと足早く発売された『ステラ臨時増刊 あまちゃんメモリアルブック』(NHKサービスセンター/1050円)は、『週刊ステラ』が撮影してきた秘蔵スチール写真を満載した永久保存版だ。
過去のアイドルやテレビ番組、ヒット歌謡曲からの引用やパロディーが随所に盛り込まれている『あまちゃん』は、劇中に懐かしいカラオケ映像やレコードジャケットが頻繁に登場する。そうした凝った演出シーンを確認するため、録画して何度も見直すという視聴者も少なくないらしい。そんな愛好家たちに向けた「こだわりのカラオケ映像集」といったレアな企画も掲載しており、ファンなら必携の1冊。
今年を代表するドラマの総集編的なアイテムだけに、売れ行きも絶好調だ。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意