とくに鶏は数千個に1個の割合で産卵の殻にサルモネラが付着する。また、産卵前に卵白がサルモネラに汚染されることもあるといわれるだけに厄介だ。
こうしたことを予防するためには、(1)ヒビの入った卵は使わない。(2)卵の割り置きはしない。(3)加熱調理をしっかり行う。(4)卵を生食する場合は、表示されている消費期限内にする、などに注意すべきだという。
この他、腸管出血性大腸菌(O157,O111)なども牛の腸にいる細菌で、肝臓の内部にも存在している場合があるので同様の注意しよう。
細菌が発育するには水分と37℃前後の温度、栄養(すなわち食品)の三つの条件が必要だ。そして、細菌は分裂を倍々で繰り返して繁殖していくため、途方もない増え方をする。20分で分裂する細菌の場合、12時間後には約2兆個にもなる。ウイルスの場合は食品の中で増えず、人の体内に入ってから増えるので、食品に付着させないことが何より大事となる。
食中毒の原因になる細菌やウイルスは、身近なところで機会をうかがっている。食材を買うときは消費期限を確かめ、持ち帰ったら生鮮食品はすぐ冷蔵庫へ。冷蔵庫も10℃以下、冷凍庫は-15℃以下に保つことが大切だ。
調理するときは手を石けんできれいに洗う。生肉や魚を切ったまな板や包丁は必ず洗って熱湯消毒をする。布巾やタオルは、常に清潔なものを使うこと。
専門家によると、「もし。食中毒に罹ったかもしれないと思ったら、まずはしっかり水分補給をし、原因物質を早く体外に出すことです。吐き気止め、下痢止め薬などを慌てて飲むと、それらが体内から出にくくなるため、かえって症状が長引き、重症化する恐れもあります」という。
都内の総合クリニック院長で医学博士の久富茂樹医師は、次のようにアドバイスをする。
「加熱済みの料理なら常温保存でも平気と思うのは危険。料理を室温に放置すると、菌が増殖して食中毒の原因になることがあります。たとえ低温でも、菌は時間とともに少し増えていく。材料は早く使い、料理も早いうちに食べるのが一番です。特に神経質になることはありませんが、自然の物には菌がいるという正しい危機意識を持つこと。味やにおいなど、五感をフルに発揮して、危険なものを排除する能力も鍛えてほしいですね」
一番危険なのは、前述した「O157」や「O111」などの、死に至ることもある腸管出血性大腸菌だ。決して食中毒を侮らず、体調の変化や不安が生じた場合、予防法を含めて医師の相談を受けることをお勧めする。