「リーグMVPが巨人以外から選ばれる可能性が再び高くなってきました。全選手が前年よりも成績を落としたと言っていい。強いて候補者を挙げるならば菅野(智之=24)でしたが、2度目の故障離脱はいただけません」(スポーツ紙記者)
代走専門の鈴木尚広(36)も有力候補というのだから、巨人選手個々の成績がいかに悪かったかは推して知るべしだ。
「原監督の采配を巡って、後年の評価が別れるでしょうね」(球界関係者)
巨人はペナントレースを選手層の厚さで逃げ切った。優勝と同時に各メディアが盛んに報じたのが『原采配の妙』と『決断力』である。特に褒め称えられたのは、チームリーダーの阿部慎之助(35)の一塁コンバートだ。
原辰徳監督(56)が優勝後に明かしたところによると、阿部の不振は予測していたという。キャンプから体力温存を図ったのか、練習不足が続き、「ヤバイ」と思っていたそうだ。当然、大黒柱の不振はチーム全体に影響する。そして、ペナントレース後半に喝を入れるため、『一塁手阿部』を決断した。
「セ・リーグは投手が打席に立つため、バントシフトの守備が複雑になりがちです。そのため、守備力の高い選手に一塁を守らせないと1点を争う場面で痛い目に遭う…」(プロ野球解説者)
巨人キャンプを見学した者なら分かると思うが、阿部は時折、気分転換で一塁の守備に入ることがある。だから複雑なバントシフトにも対応できるはずだ、と見越しての起用だった。だが、この『一塁手阿部』を原采配の成功と言い切れない理由は、第二捕手の小林誠司(23)にある。失点には繋がらなかったものの、バッテリー間での小さなミスは数多くあった。ビッグネームだらけの巨人投手陣と組んだのだから、緊張するのは仕方ないとしても、「序盤戦でもっと場数を踏ませておくべきだった」という声がベンチ内で漏れた。
また、最後まで固定できなかった打線に関しても、こんな指摘が聞かれた。
「四番も務めた村田(修一=33)は不振懲罰で八番まで経験させられました。長野(久義=29)も四番を任されましたが、2日と続けて打たせてはもらえませんでした。選手たちの精神的ダメージが懸念されます」(前出記者)
全日程を終了し、DeNAへの負け越しが決定した。2005年以来の屈辱である。2位の阪神と、3位の広島に勝ち越したが、それは両チームの終盤戦での失速によるもの。交流戦(16勝8敗)がなければ優勝はあり得ない状況だった。チーム平均打率の2割5分6厘はリーグ5位。チーム防御率3.61はリーグトップだが、12年2.16、13年3.21と年を追うごとに数値を下げている。
「巨人が10月上旬の時点でドラフト1位に考えているのは有原航平(早大)です。原監督のお願いで『即戦力投手』に変更になりました」(同)
原采配の功と罪。野球は個人成績ではなく、チーム力ということを証明したシーズンでもあった。だが、本当の評価は来季以降、不振だった主力選手が立ち直るか、今季日本一まで駆け上がることができるか否かで決まりそうだ。