CLOSE
トップ > スポーツ > USA発 新聞、テレビではわからないMLB「侍メジャーリーガーの逆襲」 レンジャーズ在籍わずか2日で戦力外に… 藤川球児に関する五つの素朴な疑問

USA発 新聞、テレビではわからないMLB「侍メジャーリーガーの逆襲」 レンジャーズ在籍わずか2日で戦力外に… 藤川球児に関する五つの素朴な疑問

 今の藤川球児には、わからないことが多すぎる。
 開幕時は姿が見えなかったし、5月中旬にメジャーで投げ出したと思ったら、翌日には戦力外通告だ。それを受けてメディアは勝手に日本復帰と書き立てている。阪神ファンから『どないなっとるんや』というぼやきが聞かれるようになったので、今回は藤川に関する五つの素朴な疑問を書き出し、それに手短に答えていきたい。

 Q1:大リーグの常識の一つに「トミージョン手術を受けた投手は2年後に100%の状態に回復する」というのがあるが、なぜ藤川は同手術後2年経っても元の状態に戻らないのか?
 A:術後2年で100%の状態に戻るというのは、大まかなイメージを述べているに過ぎない。実際のトミージョン手術は結果のバラツキが大きい。(1)2割くらいの投手は速球のスピードが以前より速くなり球威も増す(特に20代前半の投手)。(2)3〜4割の投手は一般に信じられているように術後2年くらいで以前の球速を回復する。
 この二つを「勝ち組」とすれば、以下の二つは「負け組」と言っていい。
 (3)3〜4割の投手は以前より球速が落ちキレも悪くなる。(4)1割強の投手は手術が失敗に終わり、再びマウンドに立てないまま引退に追い込まれる。
 藤川のケースは(3)のパターンだ。昨年8月上旬にカブスでメジャーに復帰したあと一時期147キロがコンスタントに出たので、(2)になる可能性もあったが、今年のキャンプでは、150キロを期待されながら143キロ程度しか出ないため(3)であることが判明した。

 Q2:レンジャーズはなぜ昨年防御率が4.85だった藤川とメジャー契約をしたのか?
 A:4.85という防御率はリリーフ投手の平均値(3.80前後)よりかなり悪い数字で、通常ならメジャー契約にはならない。実際、昨季在籍したカブスは契約更新を見送った。
 そんな中、レ軍だけが興味を示したのは、過去に大塚晶則と上原浩治をクローザー、セットアッパーとして活用した実績があり、藤川もトミージョン手術の勝ち組になれば大きな戦力になると期待したからだ。
 ただギャンブル的な契約で外れる可能性も高いので、年俸は100万ドル(1億2千万円)に抑えられた。

 Q3:マイナーの成績がひどいのに5月15日にメジャーに昇格したのはなぜ?
 A:レンジャーズとの契約で今季、藤川は球団に命じられてもマイナー行きを拒否できる。にもかかわらず、しばらくマイナーでプレーしていたのは、DL入りしたメジャー登録選手に1カ月間認められている「リハビリ出場枠」で出ていたからだ。それが限度いっぱいになったのでレ軍はマイナーに置いておくわけにもいかず、メジャーで使わざるを得なくなったのだ。マイナー(2A、3A)では11試合に登板して10回1/3で四球を9つも出す乱調。防御率も4・35というひどさだったが、それでも5月14日にメジャーに引き上げられたのは、契約のおかげと言っていい。

 Q4:レンジャーズ在籍わずか2日で戦力外になったのはなぜ?
 A:球団がこれほど早く見切りを付けたのは、球速もキレも期待とは程遠いレベルで、トミージョン手術の「負け組」になったことは明白であるため、実戦で使ってみてダメなら戦力外にするしかないとダニエルズGMが判断したからだ。
 メジャーでは30代半ばのベテランがいとも簡単に戦力外通告を受けて球団を去っていく光景が日常的に見られる。40人枠に入っていないマイナーの有望株を引き上げるには、枠を一つ空ける必要が生じるからだ。
 特に30代半ばの力の落ちたベテランは消耗品扱いなので簡単に放り出される。藤川は2試合投げただけで放り出されたが、日本人投手では'12年に五十嵐亮太(当時ブルージェイズ)がわずか2試合で解雇、'13年には当時カブスの高橋尚成が3試合に投げただけで戦力外通告を受けている。

 Q5:日本復帰が取りざたされているが、クローザー復帰はあるのだろうか?
 A:ないだろう。トミージョン手術の影響でクローザーが務まるレベルではなくなっている。
 今季藤川はマイナーで11試合に投げて防御率4.35だったが、これに近い成績だったのは井川慶だ。
 井川はオリックスと「年俸1億円+出来高」で契約したが、日本球界に復帰後は、冴えない投球が続いた。藤川も似たようなパターンなるように思えてならない。
 阪神は藤川が去った後、守護神に呉昇桓を獲得したが、呉は2年契約が切れる来シーズンも阪神で投げることを希望している。他球団も世代交代が進み生きのいいクローザーが機能しており、ネームバリューしか残っていない藤川をレッドカーペットで迎えるような物好きな球団はないだろう。

スポーツジャーナリスト・友成那智
ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は各媒体に大リーグ関連の記事を寄稿。'04年から毎年執筆している「完全メジャーリーグ選手名鑑」(廣済堂出版)は日本人大リーガーにも愛読者が多い。

スポーツ→

 

特集

関連ニュース

ピックアップ

新着ニュース→

もっと見る→

スポーツ→

もっと見る→

注目タグ