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筋肉も骨も弱まり運動機能が一気に下落 今からできる「ロコモティブシンドローム」回避術(1)

 年齢や生活習慣が原因で足腰の機能が衰える、「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群)。メタボリックシンドロームが内臓脂肪の赤信号だとすれば、ロコモティブは加齢や生活習慣が原因で、腰や膝など下半身の関節、筋肉の赤信号なのだ。

 運動器とは、筋肉、関節、骨など、人が移動するために使う器官のこと。筋力が低下したり、関節に疾患を持っていたり、骨粗しょう症などで骨がもろくなっていると運動機能が著しく低下し、日常生活に支障が出る。
 「健康で長生きしたいと誰もが思い、それに伴い医療体制も整ってきました。今やガンは死の宣告ではなくなり、心筋梗塞も初期の治療でほぼ完全に治るようになったのです。脳梗塞を発症しても、発症2時間以内に治療すれば100%回復する。人の命を奪う病気は、このように適切な時期に適切な治療さえすれば治るようになる一方、ロコモティブはそれ自体では死ぬことはなく回避できるものの、一度なってしまうと完治させることは難しいのです」(山梨大医学部名誉教授・田村康二氏)

 スキーヤーの三浦雄一郎氏は、80歳にしてエベレストに登頂し、最高齢登頂者の金字塔を打ち立てた。しかし、多くの中高年は足腰が弱り、深刻な疾患を抱えているのである。
 たとえば、中高年になってから転倒して大腿骨を骨折してしまうと、元通りの体になるのは非常に難しい。膝の関節がすり減って痛んでも、治療といえば痛み止めしかない。将来、寝たきりになるかどうか、人生最期の時をどう終わるかを左右する、重大な疾患なのだ。

 都内で認知症グループホームを経営するAさん(66)は、今年に入って転倒して、大腿骨を骨折してしまった。手術して、その後リハビリに励んでいるが、4カ月経った今も松葉杖に頼らなければ歩けない。
 「このままでは、自分で経営するホームに入ることになる」
 と懸命にリハビリに取り組むが痛みは消えず、イライラの日々だという。
 「家の中で段差のあるところはスロープにするとか、手すりにつかまって歩く習慣をつけるなど、決定的なケガをしない方法はいくらでもある。進行すると介護が必要になる可能性が高いとされているため、早めに対策を講じなければならないのに、高齢になってから心配することだと思っている人が少なくないのです」(田村氏)

 とはいえ、初期症状は40代から始まる人が多い。事実、骨・関節・筋肉の機能は40代に大きな曲がり角を迎えるという。しかも前述したように、機能が破綻してからでは治療しても回復が難しく、認知症などの疾患もここから始まる。ある意味で、メタボより遥かに深刻な疾患なのだ。

 現在、4700万人が患っているというロコモティブ。女性の場合、40代になると女性ホルモンの分泌が減り、骨が弱り始め、体を支える筋力が衰え、ひざの関節がすり減ったりする。男性も更年期になると、男性ホルモンのテストステロンの分泌量が減り、筋肉が衰え、カルシウムが不足して骨密度が低下する。
 頭では若いと思っていても、筋肉は想像以上に衰えており、そのギャップが思わぬ事故を引き起こしてしまう。
 また、ロコモとメタボには相関関係もあるという。ロコモになると、体を動かせなくなる。予備軍でも運動量はかなり減る。そのため基礎代謝が低下し、メタボになる可能性が高まるという。
 そればかりではない。慢性的な痛みが続くことで、うつ状態に陥るという負の連鎖も孕んでいるのだ。

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