あいりん地区の南海電車高架下では、数年前まで台車を使った簡易の露店が軒を連ねていた。当初は労働者相手の日用品等を扱っていたが、徐々に覚せい剤や裏DVD、さらにはさまざまな盗品が堂々と売られ、無法地帯と化していたのだ。
「“泥棒市場”などと呼ばれるような事態になり、大阪市もこれまで取り締まりを実施してきました。結果、一時は300店以上あった露店も大半が退去。そして今回は、残された違法露店の一掃を検討しているのです」(社会部記者)
背景には、橋下徹大阪市長の提唱する「西成特区構想」がある。
「西成特区のモデルケースとして、萩ノ茶屋に来年春、小中一貫教育の新しい公立校が開校しますが、そのために健全な教育環境を確保するというのが狙いです」(同)
大阪市と西成区はすでに、露店をあいりん地区内の特定市有地に移して管理する「西成フリーマーケット構想」を打ち出している。
「市有地で露店が営業するのを認めること自体、異例なことですが、今度こそ違法露店は完全に無くなるでしょう。成功すればフリマは名物になりますよ」
西成区関係者はこう言うが、果たしてすんなり行くのか。本誌記者が萩ノ茶屋へ行くと、かつて異様な賑わいを見せていた市立萩之茶屋小学校の東側道路には出店避けのフェンスが設置されていた。露店は1軒も見あたらず、しきりにパトカーやガードマンが行き来し、物々しい雰囲気だ。
近くを歩いていた労働者は不満気に言う。
「店出すどころか座り込むだけで警察が飛んでくるんやから。ワシらに圧力かけといて何が西成特区や」
静かになったかに見える“泥棒市場”。しかし、土日の早朝にはゲリラ屋台が出現し“ここでしか手に入らないモノ”を売っているという。
小学校の西側、高架下で古本の露店を出していた男性はこう語る。
「フリマにしても誰も移らへんと思う。ここではマトモなもんはあまり売れんし、管理されてまで商売しようというやつもいてへん」
やはりイタチごっこになるのか。