ロシアワールドカップの初戦コロンビア戦が終わっても、西野朗監督の“オレ様”本田への信頼は揺るがない。残るセネガル、ポーランド戦は大会前のパラグアイ戦で復調した香川真司ではなく、「元ミランの背番号10」本田をトップ下に据えて、予選突破を目論んでいるという。
だが、チーム内からは、司令塔・本田への風当たりは強い。運動量が少なく、ボールを受けても相手にすぐに囲まれてしまい、寄せられてつぶされる。それか、苦し紛れの横パスやバックパス…。シュートをお膳立てするどころか、武藤嘉紀、柴崎岳らのロンドン五輪世代からは「賞味期限切れ」のレッテルを貼られている。
それでも指揮官が“オレ様”をエコヒイキして主軸に据える理由とは? ベテランサッカー記者が明快に明かす。
「論功行賞ですよ。日本サッカー協会の技術委員長だった西野さんに思いもしない日本代表監督の椅子が転がり込んできたのは、2カ月前に選手たちが反乱を起こし、ハリルホジッチ前監督の解任を求めるメールを田嶋幸三日本サッカー協会会長に送ったからです。その首謀者が本田。その本田が、多くのスポンサーを味方につけ、協会の意向に沿って西野ジャパンを誕生させました。その恩義があるから、西野監督は本田を疎かにすることができません。どっちみち、今のチーム戦力では3連敗が既定路線だったわけで、協会としても失うものは何もない。ならばオレ様に賭けようと…」
見逃せないのは、協会がしゃにむに「本田をスターにしよう」と躍起になっていることだ。
実は、本田にはW杯後、Jリーグへの復帰話が持ち上がっている。名門バルセロナからスペイン代表MFイニエスタを獲得した神戸がメキシコ・パチューカ退団を表明した本田も獲得し、クラブの“二枚看板”に仕立てようとしているのだ。
「J1神戸のオーナー三木谷浩史楽天会長はイニエスタを獲得して、元ドイツ代表FWポドルスキとの“ホットライン”を開通させたが、まだ満足していない。圧倒的な人気クラブにするには、本田が必要と考えている。常識外の32億円3年契約でイニエスタを獲得したことでJリーグの価値が上がり、日本サッカー協会も恩恵を受ける。そのためにも本田には、『さすがACミランの10番を背負った選手だ』という評価でロシアW杯を終えてもらわねば困る。それは西野監督も認識済み。延長線上には、'12年以来となる『ヴィッセル神戸監督』再就任の路線も敷かれているから」(大手広告代理店幹部社員)
インターネット動画配信サービス、DAZNの後押しも見逃せない。2017年からJリーグと結んだ10年間の放映権料は、約2100億円。そのDAZNも当然、イニエスタと本田の競演を熱望。ドリームチームができれば、Jリーグの人気は確実にアップし、契約者が増え、サッカーくじ「toto」の売り上げも伸びる。それがJリーグ、日本サッカー協会に還元されるわけで、本田をエコヒイキするのは当然なのだ。
さらに追い風になっているのが、東京都心のサッカースタジアム構想だ。ここにきて、新たな動きが出始めた。
すったもんだの末、今年10月11日に豊洲への移転が決まった築地市場問題。その跡地に、小池百合子都知事は昨年6月、「食のテーマパーク」などで再開発すると言及していた。これに猛反発しているのが、豊洲市場を観光拠点として整備する「千客万来」の運営事業者「万葉倶楽部」(神奈川県)だ。
「知事の言う通りなら築地跡地に類似施設ができ、事業が立ち行かない」と豊洲事業白紙化も検討されていたが、5月30日に急展開、小池都知事が万葉倶楽部の高橋弘会長とトップ会談を開き、謝罪したことで事業を進める方針に転じたのだ。建設ラッシュが落ち着く2020年後に、速やかに着工するという。
万葉側が矛先を収めたのは、会談で小池都知事が築地跡地の食のテーマパーク構想を断念する旨を伝えたからだという情報がある。
築地市場跡地は都が今年度中に築地の街づくり方針を策定し、2020年東京五輪・パラリンピックの2年後に事業着工を目指すとしている。候補は「野球場」、「カジノ」、「サッカースタジアム」の3つ。そうなれば、新国立競技場と合わせて都心に2つの巨大スタジアムができる可能性が高い。どちらかが、巨人(もしくはヤクルト)の本拠地になるにせよ、もう一つは三木谷氏の「ドリームチーム」の本拠地となる。そこまで将来を見据えているのだ。
コロンビア戦後には、予選突破を左右するセネガル戦(24日24時)が控えている。英プレミアリーグ、イタリア・セリエA、ドイツ・ブンデスリーガ、フランス・リーグアンの強豪クラブでプレーする選手を揃えた強敵だが、元ミランの10番の看板はそれでこそ生きる。
西野監督が思惑通りに栄光を手にするのか、それとも玉砕か…。けだし見ものである。