ひと夏越せば勢力図はガラリと一変する。特に近年の菊花賞ロードは、夏の上がり馬が春の勢力を一蹴するケースが目立っている。
昨年のオウケンブルースリ、2006年のソングオブウインド…近3年だけでも、春はクラシックに縁のなかった馬が秋の頂点を極めている。
今秋、勢いを武器に天下奪りを狙うのがアドマイヤメジャーだ。友道厩舎には皐月賞馬アンライバルドがいるが、スタッフの間ではGI馬にも負けない評価を受けている。
「春は弱い部分があって思うような調整ができなかった。そんな状態であの成績を残すんだから能力は相当高い。皐月賞馬と比較してもそん色はない」と杉村助手は断言した。
その片りんを見せたのが、前走の1000万「三田特別」だ。初の古馬相手をまったく問題にしない0秒4差のV、直線では川田騎手が手綱を抑えるほどの楽勝だった。
「未勝利戦から3連勝したけどすべて乗ったジョッキーが違う。それでも結果を出しているのは競馬センスの高さ。器用さがあるからだよ」と杉村助手は能力の高さに加えて、もうひとつの長所を上げる。
ただ、不安がないわけではない。前走後は宮城県・山元トレセンへ放牧、8月19日、栗東に戻った。激戦の疲れを癒してリフレッシュするのが狙いだったが、逆に馬体がガレてしまう誤算があったという。そのために体を回復させながらの急ピッチでの調整となった。
「放牧先から戻ってきたころは体が緩くて歩くのもやっとだった。まだケイコの動きにはスムーズさがないけど、何とかあと一歩のところまでは持ってこれた」
状態は決して胸を張れるものではない。しかしそのコンディションでトライアルを勝てば当然、頂点も見えてくる。陣営は苦しい状況でも、底力を信頼している。
「このデキで激走してしまうとレース後の反動が気になるけど、能力の高さでクリアしてしまう可能性は十分にある。それに春はクラシックに出走できなかっただけに、その悔しさを何とか晴らしたい」
期待と不安を抱きながら、西の最終兵器が菊に向けて走り出す。