A:抗がん剤や放射線は細胞増殖の盛んな細胞に障害を与えます。がん細胞は分裂、増殖が盛んです。
ところが、正常な細胞のうちでも、口腔粘膜や腸管上皮の細胞は増殖が盛んなため、抗がん剤や放射線のダメージを受け、口内炎や腸炎を起こしてしまいます。放射線障害について最近、興味ある論文が報告されました。防衛医大が行った動物実験結果です。
実験は、マウスの全身に7.5シーベルトの、致死率50%(15匹に当てると7〜8匹は死ぬ)の強い放射線を当て、その直後に体重1キロ当たり3gのビタミンCを注射しました。
●ビタミンC大量点滴療法
その結果は、骨髄の急性障害(血球や血小板が減って下血などして死亡する)が軽くなり、15匹中14匹が2カ月間生き延びたのです。放射線を照射した直後と24時間後に半量ずつ注射した場合も、大半が生存しました。
しかし人間の場合の効果は不明です。体重60キロの人の場合、180gも注射しなければなりません。
ビタミンC大量点滴療法は、自由診療で行っている診療所も多数あります。私も、患者さんの要望もあり、行っています。180gは大量ですが、放射線療法直後と24時間後で半量ずつ点滴するなら可能な量です。
ご質問の方にも、この方法をお勧めしますが、注意点を述べておきます。
G6PD異常症の人は、溶血が起こることがあるので、できません。溶血は、赤血球の膜が破れて、中のヘモグロビンが流出する現象です。G6PD異常症は遺伝性の溶血性疾患で、日本人には0.1〜0.5%の割合でみられます。
もっとも重要な副作用は脱水です。急速に点滴すると、体の水分が血管中へ引き込まれ、そのため脱水となり、頭痛が起こります。私の経験では、1g当たり1分以上かけて点滴するとこの副作用は見られません。
ご質問の方は、ビタミンC大量点滴療法を希望されるなら、この点滴の経験が豊富な医師に治療してもらうとよいでしょう。
牧典彦氏(小山病院院長)
自律神経免疫療法(刺絡)や加圧トレーニング、温熱療法、オゾン療法など保険診療の枠に捕われずベストな治療を実践。小山病院(大阪市東住吉区)院長。