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ネットで騙された人を助けてくれる便利屋

 「当社では、表の案件、裏の案件と別々に取り扱ってます。なぜかって? 裏の世界では、狙われる危険もありますからね。あくまでも安全第一に取り組んでいます」

 そんな便利屋のA氏(35)が、こんな注意を促す。

 「先日も夜に知らない携帯番号から電話がかかってきました。周囲がうるさかったので場所を変えてから受話器を取ってみると、いかにも若い男性の声で『助けて下さい、ネットの掲示板で詐欺にあいました。騙されたものを取り返してほしい』との依頼でした。最近こういった依頼が多いんです」

 A氏が、裏仕事掲示板に自分の宣伝を掲示しているのは、“ネット被害”の依頼を取り込むためだ。
 「まあ、腕っぷしが少しでも人のためになれば…(笑)」(同)

 ということらしい。詳しい状況は、以下…。

 「依頼者は、6月中旬頃、ネットの裏仕事掲示板で、〈結婚式のサクラのバイト日給5000円〉というのに応募したらしいんです。翌日新宿アルタ前で待ち合わせた。そこで、本人と会い、仕事を紹介されると思いきや、『本日は結婚式のサクラのバイトは、無いので、会社のリサーチを行ってほしい』と言われたそうです。指示された通り、まずは、キャッシングのレ○クへ…。『店員の対応をチェックしてきてほしいので、カードを1枚作ってきてくれ』と言われたらしく…出来上がると次は丸○のカードを同じように作らされ、最後は携帯電話まで購入させられて、最後に『カードと携帯電話を自分が解約するのでお預かりします』と促され預けました。最後にまた連絡するので、と言われ、解散。(苦笑)家に帰ってから不審に思え始めてきて、双方の会社に電話を入れて確認したところ、レ○クで40万丸○で10万の現金が下ろされているのに気付き、これはヤラれたと気付いたそうです」(A氏)

 純朴な青年である。しかし、事態は意外な展開を見せた。

 「すぐ電話して相手に確認しようとしたところ相手のほうから電話が入り、『今日の分のバイト代を払いたいので×日に再度アルタ前に来てほしい』と連絡が入り、彼は了解したんです。会う事さえ出来れば…と思ったらしく、それでうちへ電話をかけてきた。私は当然(詐欺師が2度の接触はしないだろう!)と思っていたのですが…」(同氏)

 田舎から出てきたばかりの就活青年と聞き、男性の切羽詰まった声がA氏の心に響いた。案件を請け負ったA氏は、当日青年と待ち合わせ、犯人を待った。

 「すると、なんと現れたんです。私は少し離れた所から1時間ほど見ていたのですが、来ました! 普通のサラリーマン風です。現れるなんて、プロの詐欺師の仕事ではありません。(こいつはもっと青年を食ってやろうと欲を出したんだろうな…)とすぐわかりましたよ」(同)

 少し観察し、彼らが動き出したところで、A氏はスタッフ1名とともに詐欺師を確保しにかかった。

 「私がまず、スーツ姿の詐欺師の後ろにつき、腰のベルトをわし掴み。『ちょっとお兄さん話があるんだけど、脇に来てくれるかな?』と一言。その瞬間、やつは暴れ始めたのでスタッフとともに制圧しました。すると、『皆さん、私は男二人に暴行を受けています。助けて下さい』と叫び始めたのです。…まあ無視、ですよね。それは、都会は冷たいなとは思いましたが。(苦笑)」(同)

 詐欺師はおもむろに携帯を取り出し、110番した。
 「拉致され、殺されると思ったんでしょうね。こっちはそんな見た目なわけですから。結局、警察が到着。事情をこちらが説明しサギ師は逮捕されましたが、ひやひやものでした。結局、多々反省点が残りましたね」

 もっと安全に業務を遂行したかった、ということだろうか。

 「まあ、逮捕になるとそいつから金が取れませんからね(笑)」

 ちなみにその日の料金は交通費も含めて3万3千円也。青年は、感謝に堪えない様子だったという。

 「恐らく、よその示談屋ならば10万じゃ済まないでしょう。危険手当とかなんとか言われてね。私どもは、リピーター確保のため、出来るだけ安く奉仕していますので、食べて行くだけで精一杯ですよ(笑)」(A氏)

 ネットで人助け出来るのは、やりがいがある、と語るA氏の言葉と情熱は、決して嘘は無いようにみえた。
 ただ、この手の業者が危険なのはいうまでもないだろう。当局がよくわからない被害話で簡単に張り込みなどしてくれるとも思えないが、そうかといって、あくまで業者依頼は自己責任でお願いしたいところだ。

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