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吉田沙保里選手の父・栄勝さんを襲った 他人事ではない突然死を呼ぶ「くも膜下出血」の恐怖(2)

 頭痛の次に挙げられる第2の特徴は、嘔吐だ。80%の人に見られ、その次に意識障害や麻痺が60%の割合で現れるという。
 こうした重い症状が出るくも膜下出血の原因は、前で触れたように直径1ミリ〜3ミリくらいの脳動脈の分岐部にできた動脈瘤の破裂による出血だ。動脈瘤は血管にできた風船のようなコブで、もともと壁が薄い分岐部にできる。

 成人の30人に1人が動脈瘤を持っているといわれるが、破れるまでは全く何の症状もなく気づかない。多くは40〜50代になってから、ある日突然に破れる。
 「くも膜というのは、薄いオブラートのような膜で、くもの糸のように張っています。動脈のコブが破れると、くも膜と軟膜との間の髄液中に出血する。1回目の発作で助かっても、手術をしないと2回、3回と発作が起こり、1回目で2割、2回目の発作で5割、3回目の発作があると8割で死亡するといわれています。くも膜下出血の発作が起きたら、一刻も早く脳神経外科の専門医のいる病院に運ばねばなりません」(前出・外科担当医)

 専門医はすぐに開頭手術を行い、血管に出来たコブを金属のクリップで挟んで大出血を防ぐ。
 「最低血圧(血圧の低い値)の低い人は大出血が少ないが、最低血圧が高い値の人の場合は、発作が起きた時の危険度も高くなります。クリップをかけると動脈瘤は自然に縮んでしまいますが、いずれにしても動脈瘤除去手術は、熟練した病院であれば7、8割の患者さんが2、3週間で退院し、1、2カ月で仕事に復帰できます」(同)

 だが、入院しても安心はできない。くも膜下を起こした人の20%程度が“再破裂”する場合があるからだ。これは初期の時間帯で最も多く、入院して検査をして手術を待っている間にも“再破裂”する可能性があり、手術後も安心はできない。
 くも膜下出血は脳表に広がり、今まできれいな髄液の中に浮いていた脳が急に血液にさらされるため、脳や脳の血管がさまざまな反応を起こしてしまう。中でも重大な症状は、脳血管れん縮という脳の太い血管が縮んでしまうこと。血管が縮むとその先へ血液が行かなくなるため、脳梗塞を起こしたり、片麻痺や失語がでる。これは発症から1週間前後で起こるともいわれ、油断はできない。

 さて、ここまでくも膜下出血の症状や危険性を述べてきたが、くも膜下を含む脳卒中は、突然意識を失い命を落とすことがある。冒頭の吉田栄勝さんのように、運転中の事故(急死)は、一歩間違えれば他の車や歩行者を巻き込む大参事にも結びつく。
 こうした事態を未然に防ぐには、早期診断と治療が何よりだが、そのための健診「脳ドック」は、あまり認知、普及していない。「脳ドック」では「MR」といわれる磁気共鳴装置(MRI&MRA)を用いることで、脳や血管の状態、血流などを診る。10分程度装置の中に入るだけで、X線CT検査のような被ばくもないが、一般的には「人間ドック」には含まれず、オプションとして扱われることが多い。なぜなら、通常「脳ドック」は単独でも5万〜6万円程度と単価が高く、全ての医療機関がMRを持っているわけではないからだ。また、保険適用ではないので、受診者の負担も重くなる。
 しかし、医療機関によっては「運転業務の人限定、1万5000円の脳ドックキャンペーン」などを実施しているところもあるので、機会を見て受けるのも手だ。

■「脳ドック」についての主な問い合せ先。
・一般社団法人・日本脳ドック学会(新さっぽろ脳神経科病院内011-891-2500=内線255)
・東京慈恵会医科大学付属病院(03-3433-1111)
・医療法人社団進興会(03-5408-8181)

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