もっとも、伏線はあった。マックのジリ貧地獄にたまりかねた米本社(50%強出資)は昨年暮れ、外部資本に再建を託そうと持ち株の33%を売却すべく国内外の投資ファンドなどに打診した。皮肉にも「マック身売り」の情報が狼狽売りを呼び、年が明けた1月20日の入札を経て「売却先を1社に絞り込んだ」との情報が飛び交うと、1月22日には年初来安値の2215円まで売り込まれた。
「それでも、時価総額等から算出して米本社は1000億円プラスαの売却価格を考えていたらしい。マックには株主優待券を狙った個人投資家が中心の“岩盤”株主がいる。その分を差し引けば『700億円ならば御の字』と囁かれた。シビアな買い手候補が米本社の希望を丸呑みするわけがなく、交渉の長期化は必至だったのです」(証券アナリスト)
買い本尊は誰か。大手証券マンが喝破する。
「米本社が身銭を切った自作自演の演出でしょう。6月の中間決算で米本社は株主に対し、今後の成長シナリオを説明する義務がある。その手前、お荷物の日本マックをサッサと売却しなければ株主訴訟のターゲットになる。そこで株高の“化粧”を施すことで時価総額を引き上げ、買い手候補に市場の期待感をアピールした。バカ高い訴訟リスクを考えたら安い出費ですよ」
一方で逆の見立てもある。米本社の足元を見抜いた投資ファンドが、先手を打って買い出動したというのだ。日本マック株売却を打ち上げた手前、米本社が何かを仕掛ける。株価が上昇した隙に売却して利ザヤを稼ごうとのシナリオだ。
「1月に挙がった候補が買い本尊との見立てもある。一気に買い増せば米本社からの33%と併せて経営権が握れるし、経営刷新をアピールすれば客も殺到する。投資ファンドは、そんな計算高い連中ばかりですよ」(市場関係者)
身売りのことより、うまいハンバーガーの提供に力を注いでほしいものだ。