「金本監督はオープン戦終盤、ロサリオに『開幕4番』を伝えました」(在阪記者)
復活の確信があったわけではないようだ。「期待を込めて」であり、年俸3億4000万円の大型契約で獲得した大砲に打ってもらわなければ、金本構想は根底から崩壊することになる。
「今年の阪神は不気味です。『補強は終わった』と公言しておきながら、西武から岡本洋介を獲るトレードをまとめましたから」(球界関係者)
昨年12月14日だった。谷本修副社長兼本部長は「今年に関してはもう終わり。このメンバーでベストを尽くしていく」と言い切っていた。同28日の仕事納めでも「金本監督の言葉を借りれば、2位は敗者」と、13年ぶりの優勝に懸ける強い思いも語っていた。
「開幕投手のメッセンジャーが勤続疲労から調整が遅れ、藤浪晋太郎は相変わらずノーコン病、'16年に10勝した岩貞祐太も調子が上がってきません。先発ローテーションは若手中心になりそう」(前出・在阪記者)
こうした不安材料を取り除くため、阪神は球団副社長の前言を撤退し、オープン戦終盤での緊急トレードを成立させたのだ。
「発言の撤回に関する非難はゼロ。オープン戦最下位の戦力を建て直す必要性は、ファンも分かっているはずです」(同)
緊急補強はチーム打率2割4分台、1割打者3人で“瀕死状態”にある打線の強化だ。その一番手が、4番・ロサリオ。
「2月の練習試合から、セ各球団のロサリオ対策は始まっていました。専門的な話をすると、彼は打つ瞬間に後ろの右足が動くんです。右足が動くということは振り遅れている。日本の投手はクイックモーションを使います。セットポジションで投げるリズムを変えていけば、フルスイングされることはない」(ライバル球団スタッフ)
ロサリオが日本の野球スタイルに慣れるのを待っていたら、シーズンは終わってしまう。手遅れにならないうちに「新4番候補」を見つけた方がよさそうだ。
だが、4番を託せる大砲はどの球団も手放さない。放出の可能性があるのは、日本ハムの中田だけだろう。
「栗山英樹監督は清宮幸太郎の開幕一軍にこだわり続けました。チームは清宮中心に生まれ変わろうとしています。日本ハムはベテランや高額年俸の選手には冷たい。年齢的に上積みが期待できないと分かった選手に対しては特にそうで、費用対効果の計算式を使って、ドライな評価を下してきました」(ベテラン記者)
昨季の中田は打率2割1分6厘、16本塁打と不振に喘いでいた。国内FA権を行使しなかったのは、こんな成績では買い手が付かないと判断したからである。
栗山監督はそんな中田を新主将に抜擢し奮起を促したが、清宮への期待は増すばかり。費用対効果で選手を測る日ハムの傾向からして、「交換要員次第で、いつでも放出」というのが周囲の合致した意見だ。
「巨人だって、中田に注視しています。ベテラン阿部慎之助の調子が上がってこない。ゲレーロを獲得していますが、阿部不振でプロ4年目の岡本和真をスタメンで使うことも増えてきます。高橋由伸監督(43)は岡本のスタメン起用に一抹の不安を抱いていて、『レギュラーは奪い取るもの』とし、その厳しさがまだ岡本にはないと見ています」(スポーツ紙記者)
日ハムから中田放出に動くことはないものの、阪神が仕掛ければ、巨人も横ヤリを入れてくるだろう。
「広島、DeNAは先発投手陣の調整が遅れています。V候補の広島を叩くには、本調子になる前の打線強化が必須です。金本監督が打ち勝つ野球にこだわっているのは間違っていません」(前出・ベテラン記者)
虎ファンも優勝に飢えている。藤浪がオープン戦でノーコン病を発症させた13日の対ヤクルト戦、甲子園のスタンドは最初の四球を出すなり、ザワつき始めた。藤浪はその空気に飲まれてしまった感もあるが、今までの虎ファンだったら、「次、頑張れ」で見逃していた。しかし、今年はエース候補であっても不甲斐ない投球には容赦しない。優勝に飢えた気持ちが厳しさに変貌したのだ。
「巨人は4年連続V逸となれば史上初の汚点となります。阪神も今年勝たなければ、金本バッシングは避けられません。ロサリオの年俸3億円強をドブに捨てることになったとしても、チームの勝利を優先すべきですよ」(同)
緊急補強劇は、開幕カード以上に熱くなりそうだ。