これまでW杯本大会と予選で8戦未勝利だった宿敵オーストラリアに2対0で勝ち、W杯ロシア大会の切符を手にしたハリル・ジャパン。最終予選のホーム初戦を落とし、「W杯出場確率0%」からの苦しいスタートとなったが、土壇場で本田圭佑(パチューカ)、香川真司(ドルトムント)の二枚看板をスタメンから外す大ナタを振るい、過去のデータを打ち破った。
そのオーストラリア戦翌日の9月1日、さいたま市で日本サッカー協会の田嶋幸三会長とハリルホジッチ監督が会見を開いたが、取材陣の質問は監督の進退問題に集中した。オーストラリア戦の試合後、ハリルホジッチ監督がゲーム内容には一切触れず、「実はプライベートで大きな問題がある。この試合の前に帰ろうかなと思ったくらいだ。もしかしたら、(日本に)残らない」と爆弾発言。質問を一切受け付けず、一方的に会見を切り上げたことで、波紋を広げていた。
一夜明けた会見では、「一部の方は残念に思うかもしれないが、仕事を続ける」と取り繕ったものの、これは5日に最終戦、アウエーのサウジアラビア戦を残していたから。日本代表の番記者によれば、辞任発言は「親族が末期がんで闘病中のため」とのことだが、これは表向き。真の理由は別にあるという。
「北朝鮮が8月29日に弾道ミサイルを発射し、北海道上空を通過して太平洋に落下しました。世界中に衝撃を与えた中、ハリル監督の家族が気にしているのは、北朝鮮が『有事の際には米国よりも先に日本の領土が焦土と化すことを知るべきだ』と警告していることです。それを暗示するように、3日には水爆実験。日本にいるのは危険で、代表監督を辞めて帰国するよう求めているのです。ボスニア生まれのハリルホジッチ監督はユーゴスラビア紛争に巻き込まれ、資産を失った過去を持ちます。その後、せっかく監督業で財を成したのに、再び失いたくない。そんな家族の思いを察して、辞任を考えていたのです」(前出・番記者)
だからだろうか。オーストラリア戦では、大一番にもかかわらず、本田、香川を最後まで封印。右サイドに先発させた22歳の浅野拓磨が先制ゴールを決め、21歳のボランチ井手口陽介がダメ押しのミドルシュート。W杯切符を手にしたこの試合こそ、ハリル・ジャパンの集大成となった。
この動きを受け、日本サッカー協会は、何人かの次期監督候補に接触しているという。本命はメキシコ人のハビエル・アギーレ前日本代表監督だ。
就任後の'15年2月、スペインのクラブ監督時代の八百長疑惑で同国の検察から告発されると報道され、これに慌てた当時の日本サッカー協会は契約を解除。しかし訴追には至らず、協会内では同情論と共に復帰を望む声が強まっていた。
「今年6月にACミランとの契約が切れ、移籍先を模索していた本田は、メキシコの名門パチューカと契約。これに尽力したのが、現役時代パチューカでプレーし、メキシコのサッカー界に大きな影響力を持つアギーレ氏です。日本のエースの就職を世話することで協会に恩を売り、代表監督復帰を狙ったのでしょうが、それがハリル監督の知るところとなり、日本サッカー協会との間に軋轢が生じました。今回のオーストラリア戦で本田をベンチに封じた理由の一つはそこにあります。この先もハリルホジッチ監督が指揮を執る限り、本田の出番は少ない。しかし、テレビ局やスポンサー筋は、人気の高い本田の出場を欲しています」(大手広告代理店)
現在はフランス国籍も持つハリルホジッチ監督は、後任指揮官にフランス人のポール・ルグエン前オマーン代表監督を推薦したという。同氏は'10年南アフリカW杯でカメルーン代表監督を務めたこともあるが、日本サッカーには精通していない弱点がある。
そこで折衷案として、世界的な名選手で、元名古屋グランパスエイト監督でもある“ピクシー”ことドラガン・ストイコビッチ氏が急浮上している。同氏は現在、中国のクラブチーム広州富力の監督を務めているが、今年末で契約が切れる。それまで手倉森誠日本代表コーチで繋ぐ案も検討され始めた。
3年後に迫る東京五輪・パラリンピックで建設する新国立競技場は、その後、サッカースタジアムに姿を変える。その視線の先にあるのが、2度目のW杯開催。
そのためにも世界的名将アーセン・ベンゲル氏を日本代表監督に迎えたいところだが、同氏は英プレミアリーグ、アーセナルとの契約を2年延長したばかり。
その日に備え、一番弟子の“ピクシー”を獲得しておく狙いもある。