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西武HD筆頭株主サーベラスが送り込む刺客・工藤公康

 優勝が完全消滅した埼玉西武ライオンズの新監督人事をめぐって“お家騒動”が勃発している。背景にあるのが、毎年のように囁かれる球団の身売り問題だ。西武ホールディングス(HD)の現経営陣と、筆頭株主の米ハゲタカファンドによるベンチ裏の駆け引きは、今後もしばらく続きそうな気配である。

 来季監督として球団幹部から、潮崎哲也二軍監督(45)の名前が挙がっている。一方、ここにきて急浮上しているのが、球団OBで野球解説者の工藤公康氏(51)だ。工藤氏はライオンズ黄金期を支え、ダイエー(現ソフトバンク)、巨人でも活躍。現役生活29年間で通算224勝と、実績は申し分ない。
 「推しているのは米投資ファンド『サーベラス・キャピタル・マネジメント(以下サーベラス)』。そう、西武HDの35.5%を保有する筆頭株主です。彼らはライオンズの売却を要求しておきながら、その一方で優勝争いにも加わらず5位に低迷している現状に不満を募らせている。歴代OBを検索して工藤こそが最も話題性があり、実力を伴うと判断したのです。工藤氏がデビュー当初、米国に野球留学し、アメリカナイズされた考えの持ち主であることも察知している。そこで筆頭株主の権限をもって工藤新監督を要求しているのです」(全国紙経済部記者)

 ここに現在の西武ライオンズが抱える特異な監督選定がある。早い話、サーベラスとしてはライオンズの人気を高め、株価をアップさせたところで、西武HDから高値で保有株を売り逃げようとしているのだ。

 根底にあるのが今年4月23日に東証1部に再上場をはたした西武HDの株式。売り出し株価は1565円。その際、後藤高志代表取締役社長をはじめとする西武HD執行部は、筆頭株主のサーベラスから1565円で15%程度を買い取り、経営権の安定化を図った。しかし、サーベラスは「安過ぎる」と拒否。その後、株価はどんどん上がり、8月14日には年初来高値となる2396円を記録し、9月12日現在で2203円。拒んだサーベラスの作戦は思惑通りに進んでいる。
 「当初から、サーベラス側は売り出し時の値を2500程度に定めていた。それが1000円も安い1565円にされたことで、西武HDへの株式売却を拒んだのです。結果オーライで希望値に近付き、あと一歩と踏んでいるのでしょう。執行部としてもサーベラスに3分の1超を所有されている現状では『拒否権』が行使され、思うように会社運営ができない。かといって想定より1000円も高値で買わされるのも困る。その微妙なせめぎ合いが続いているのです」(大手証券の株式アナリスト)

 親会社の混乱が、結果的に今季のライオンズにも影響を及ぼしたといえるだろう。球団側は何とか混乱を封じ込めるべく、今季から“鬼軍曹”の異名を持つ伊原春樹監督を起用した。しかし開幕から3連敗。両リーグ最速の30敗を喫し、6月3日に休養する羽目に。田辺徳雄打撃コーチが監督代行に就任したが、その後も低迷を脱出できないままでいる。
 「6月に監督をスイッチしたのは、直後に西武HDの株主総会が予定されていたからです。サーベラス側からつつかれ、またぞろ球団売却を要求されるのを恐れ、その前に手を打った。玉虫色の田辺コーチに代行させることで、オフには何らかの結論を出すというサインを送ったわけです」(西武担当記者)

 9月15日現在、西武は首位ソフトバンクに20ゲーム差の5位。優勝の可能性が完全に消滅したばかりか、CS出場ラインとなる3位日本ハムとも8.5ゲーム差でBクラスがほぼ確定。これでは球団サイドも、サーベラスが推す工藤監督を受け入れざるを得ない状況だ。
 「潮崎哲也二軍監督の昇格か、昨季限りで退任した渡辺久信球団本部シニアディレクター(SD)の再登板が、球団親会社首脳の意向です。地味でそこそこ指導能力が高い彼らなら、急激に“営業成績”を上げることは難しいが、チーム成績は安定する。それに伴い、西武HD株価の急上昇にはつながらないが、下降もしない。持久戦で球団売却問題を先延ばしし、その間に、それなりの値段で株式をサーベラスから買い取る考えなのでしょう」(前出・経済部記者)

 工藤氏はプロ野球の球団での指導者経験こそないが、DeNAの監督候補に挙がったこともあり、ポスト中畑の候補の一人でもあった。しかし、DeNAは先ごろ、中畑監督に続投を要請することを決めた。恐らく西武の工藤新体制を察知したのだろう。
 「渡辺久信SDにとって工藤氏は兄貴格で公私にわたって親しい。監督就任となれば、フロントと現場が一体となり、チーム再建が円滑に進むとサーベラスはみているのでしょう」(前出・アナリスト)

 球団売却を迫る米ハゲタカファンドが大物監督を推し、防衛する側の経営陣が“お手軽監督”にこだわる摩訶不思議な構図。前代未聞の監督選考は、けだし見ものである。

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