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USA発 新聞、テレビではわからないMLB「侍メジャーリーガーの逆襲」 今季の予想は“12〜13勝”!? 少ない得点援護に泣かされそうな田中将大

 4月5日メジャーリーグが開幕した。
 米国の2大スポーツメディアであるESPNとFOXスポーツが予想する日本人大リーガーの今季成績は表(本誌参照)のようになっている。
 日本のメジャーリーグ・ファンが一番気になるのは、田中将大の予想勝利数が、ESPNで13勝、FOXスポーツで12勝と、かなり控えめな数字になっていることだろう。

 ESPNは昨季開幕時、まだ1球も投げていない田中の勝ち星を16勝と予想しているので、13勝という数字はあまりにも低い印象を受ける。なぜこれほど予想される勝ち星が少ないのか。理由の四つある。
 理由1:ヒジの故障が再発する恐れがあるため、今季は「90球」の球数制限を課せられる可能性が高い。そのため5〜6回までしか投げられない試合が多くなる。
 理由2:昨季のヤンキース打線は得点力が「中の下」レベルだったが、オフに補強がほとんどできなかったため今季は得点援護がさらに減少し、好投しても味方打線に見殺しにされるケースが多くなる。
 理由3:クローザーのロバートソンがチームを去り、昨年セットアッパーとして大化けしたべタンセスも今季は速球のスピードが大幅にダウン。そのためリリーフ陣の弱体化が顕著で、田中が勝ち投手の権利を持ってマウンドを降りても、終盤に逆転されるケースが多くなることが予想される。
 理由4:チームが早い段階で優勝戦線から離脱する可能性が高いため、シーズン中盤以降、モチベーションの低い状態で投げることになる可能性が高い。

 ヤンキースはメジャーきっての金満球団で、資金力にものを言わせてFAになった一流選手を買い漁るチームというイメージが強い。年俸総額は約2億3千万ドル(約280億円)でヤ軍は依然メジャーではドジャースに次ぐ高年俸球団だ。
 それにもかかわらず、ヤ軍は今オフ、ほとんど補強ができなかった。年俸総額の4割を占めるアレックス・ロドリゲス、CCサバシア、タシェアラ、ベルトランの「不良資産カルテット」が今季もチームに居座っているため、補強に回せるカネがほとんどなかった。
 そのため開幕時の主要メディアの予想はFOXスポーツとCBSスポーツがア・リーグ東地区の5チーム中4位、ESPNは最下位と予想している。
 田中は今季、この程度の評価しかされないチームのエースとして投げることになるので、試練の年になるのは必至である。

 和田毅はキャンプ前半に右太腿の筋肉を痛めてDL入り。今後は4月中旬にマイナーで投げ始めて4月下旬ないし5月上旬のメジャー復帰というスケジュールになる可能性が高い。
 予想成績に関してはESPNとFOXスポーツの数値に開きがある。
 ESPNが5勝6敗、防御率4.04という低調な数字を予想しているのは今季カブスの先発ローテが充実しているため、復帰してもローテーションに復帰するのに時間がかかり、しばらくはロングリリーフで使われると見ているからだ。一方、FOXスポーツの方は、復帰すればカブスは昨季後半好投を続けた和田をすぐにローテーションに入れて使うと見ているので好意的な数字が並んだ。
 筆者は、和田なら二けた勝利は十分可能とみている。
 5月中にローテーションに復帰できれば、今季のカブスは攻撃力・守備力とも格段にアップしているため、昨年並みのピッチングを見せれば、コンスタントに勝ち星が付く可能性が高いと思われるからだ。

 一方、藤川球児は'13年6月にトミージョン手術を受けているため、今季が本格的なカムバックイヤーになる。昨年8月にカブスでメジャーに復帰し、苦しいピッチングを見せていた藤川をレンジャーズがメジャー契約で迎え入れたのは、手術のダメージから順調に回復していれば、今季、阪神時代の球威と制球が甦り、大きな戦力になりうるという期待があったからだ。
 しかし、レ軍首脳はキャンプで、その期待が幻想だったことを知る。速球のスピードが145キロ程度しかなく、キレもよくなかったからだ。それでもレ軍はリリーフ陣がかなり弱体なので、オープン戦で好投を続ければ開幕メジャー入りの可能性もあった。
 だが3月31日のオープン戦で、大事な場面で起用されたが大炎上。股関節痛を理由にDL入りして、キャンプ地で調整をしながら、球威が戻るのを待つことになった。

 ESPNが今季の予想成績を出さなかったのは、球威は戻らず、マイナー落ちしたまま終わる可能性が高いと見ているからだ。
 しかし、そこまでひどいことにはならないだろう。レ軍は毎年リリーフ陣に多くの故障者が出て入れ替えが激しくなるチームなので、マイナーでそこそこの成績を出せば、メジャー復帰の機会は必ずあると思うからだ。
 ただ、藤川の今の球威ではとてもフルシーズン、メジャーにとどまることは不可能であることも事実だ。今後、マイナーでの調整でどこまで球威を取り戻すことができるか注目したい。

スポーツジャーナリスト・友成那智
ともなり・なち 今はなきPLAYBOY日本版のスポーツ担当として、日本で活躍する元大リーガーらと交流。アメリカ野球に造詣が深く、現在は各媒体に大リーグ関連の記事を寄稿。'04年から毎年執筆している「完全メジャーリーグ選手名鑑」(廣済堂出版)は日本人大リーガーにも愛読者が多い。

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