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機関紙値上げでも政党交付金を拒否する日本共産党の論理

 日本共産党の機関紙である「しんぶん赤旗」日刊紙が9月1日から月額購読料を500円値上げする。赤字解消を理由とするが、値上げが吉と出るか凶と出るかは未知数である。

 現在の月額購読料は2900円で、購読者数は24万人である。この状況で月2億円もの赤字が発生している。これに対して月額購読料を3400円に値上げした上で購読者数を2万人増やして26万人にすれば採算が取れると説明する。
 しかし、この説明を「捕らぬ狸の皮算用」と疑問視する声もある。まず値上げと部数増加を両立させる見通しが楽観的である。値上げによって読者が離れる危険もある。低所得者や高齢者が多い「しんぶん赤旗」の読者層にとって、値上げのインパクトは決して小さなものではない。
 次に月2億円の赤字の重大性である。月額購読料2900円で購読者数24万人ならば単純計算して6億9600円の月額収入になる。これに広告収入も加わるが、政党機関紙の性格から大企業などの広告は少なく、商業紙ほど大きくない。7億円程度の収入に対して2億円の赤字は企業経営からすれば問題なレベルである。
 加えて採算の見通しへの疑問である。既存の購読者を維持できるとしたならば値上げによって、月額1億2000万円の収入増になる。さらに2万人の購読者が増えたならば月額6800万円の収入増である。合わせて1億8800万円の収入増になるが、赤字額2億円は解消しない。毎月2億円赤字というコスト構造が2万人の購読者増加によって劇的に改善するとは考えにくい。
 以上より、その場しのぎの取り繕いの値上げに過ぎないと否定的な声も出ている。深刻な経営危機の中で改めて政党交付金(政党助成金)の受け取りを求める声も水面下では力を増している。政党交付金に反対する共産党は一貫して交付金を受け取ってこなかった。共産党は「受け取りを拒否」と表現するが、政党交付金は総務省に請求書を提出した政党に交付されるもので、制度的には「請求していない」が正しい。

 共産党が政党交付金の廃止を求める理由は明確である。政党交付金は国民の納めた税金が支持しない政党にも強制的に回されるため、日本国憲法の定めた思想信条の自由を侵害すると主張する。しかし、制度が正しいか間違っているかという問題と、現行制度を前提として交付金を受け取るか受け取らないかは別次元の問題である。
 共産党よりも所属国会議員数の少ない社会民主党でも2011年の交付額は約7億6000万円であり、共産党にとって決して小さな額ではない。本音ベースでは政党交付金の受け取りを求める党員も少なくない。
 東日本大震災後は政党交付金を復興資金に回すべきとの主張も加えたが、これも交付金を受け取らない根拠としては弱い。政党交付金制度は共産党が受け取らない分は、交付金を請求した政党で分配する仕組みになっている。共産党が請求しなかったとしても復興資金に回ることはなく、他党を利するだけである。

 党員や支持者には「機関紙を値上げするならば政党交付金を受け取って」と言いたくなる人も多い。逆に政党交付金を受け取らない本音ベースの理由では、ベテラン地方議員の説明が説得的であった。
 「政党交付金を受け取ってしまうと、それが予定収入となり、政党交付金なしでは政党運営が成り立たなくなってしまう。そのようになった場合、権力側は政党交付金を廃止して共産党を潰しにかかるだろう。」
 ここからは共産党が権力と緊張関係にあることを再確認させられる。

(林田力)

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