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地蔵様の首がない(埼玉県秩父市)

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提供:週刊実話

 都心からわずか80㎞ほどながら四方を山に囲まれた秩父盆地。この地には古くから寺社仏閣が多く、観音像を本尊とする34の寺院は秩父三十四箇所と呼ばれ、中世から信仰の対象として多くのお遍路が訪れている。

 なかでも四番札所の金昌寺は別名“石仏寺”と称され、敷地内には1319体もの石仏が安置されている。なかには子供を抱いた子育て観音、酒樽の上に座っている禁酒地蔵、亀の形をした亀の子地蔵など珍しい形の石像もある。これほど石仏が多い寺は他の秩父の札所には存在しない。だが、かつて同寺院にあった石仏は3000体以上。これが事実なら少なくとも半数以上が消失していることになる。一体、何があったのか?

 実は、民衆たちによって破壊されてしまったのだ。1872年、明治政府は神道を国教とする大教宣布を発布。これは寺院を排斥するものではなかったが、曲解した民衆によって廃仏毀釈運動が起きてしまう。その犠牲となった場所のひとつが同寺院なのだ。

 そのため、破壊を免れた石仏の多くは仏頭が欠けたままの首なし地蔵となっている。だが、寺院の歴史などを解説する境内の案内板にはこれに関する記述は一切ない。

 世界遺産に認定されていたアフガニスタンのバーミヤン大仏を破壊したのは、異教徒のタリバンだったが、金昌寺の石仏を破壊したのは同じ仏教徒である日本人。多くのお遍路や観光客が訪れる秩父有数の古刹には、そんな隠された歴史があったのだ。

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