かつてはそこに列車が停まって多くの人が行き交ったものの、いつしか存在すら忘れられる存在に…。そんな幽霊駅が、東京の地下にはいくつも潜んでいる。その最たるものが東京メトロ銀座線で、“幻の新橋駅”こそ有名だが、他にも旧表参道駅や萬世橋駅が「幽霊駅」として、往時の遺構そのままに残されている。
●消えているはずの駅名標が、終電間際になると…
では、この幽霊駅の何が恐ろしいのか。いずれの幽霊駅も“幻の地下鉄駅”として東京メトロも認めているし、ときには一般公開をするようなこともある。しかし「なら怖くないね」で終わるほど簡単ではない。
例えば旧表参道駅。この駅の解説として一般的なのは、「千代田線の開業に合わせて表参道駅を改築したときにホームを移転、旧駅が廃駅となった」というものだ。しかし、ここにはもうひとつの真実がある。もともとこの表参道駅は、「青山六丁目駅」として開業したのである。ただその後、駅名が変わったので、「青山六丁目」の駅名標はすっかり見えなくなっているはず。ところが…、ある銀座線ユーザーは語る。
「地下鉄なので車窓を楽しむなんてことはなく、車内にいる客の顔が窓に反射して映っているのを、ぼんやり見ていたんです。で、表参道駅が近づいてきたら、フッと反射する乗客が消えて、妙にくっきりした文字で『青山六丁目』って…。怖さは感じなかったんですけど、あれは何だっただろう。それからもたまに終電間際に乗ると見るんです」
果たして、この経験談が真実なのかどうかは闇の中。ただ、このユーザーは地下鉄の知識もなんにもないただの乗客。かつて「青山六丁目」という駅があったことはまったく知らなかったという。なぜ見えないはずの駅名標が見えるのか。それは、誰にもわからない。