「最初はそんなに目立つほどの馬ではなかったんだけどね。追い切るごとに動きが良くなっていったんだよ」。こうデビュー前の印象を語った橋口調教師だが、結果は周知の通り。“衝撃”のパフォーマンスで小倉芝1200メートルの新馬戦を圧勝。直前に攻め駆けするリーチザクラウンをアオッた走りが、まぎれもなく本物であることを証明して見せた。
続くアーリントンCは直線、馬群に阻まれ4着に甘んじたが、「おそらく前があいていたら突き抜けていたはず」の名将の言葉通り、ゴール前の脚勢は誰が見ても勝ち馬をはるかにしのぐド迫力。その時点で後に青葉賞を勝つアプレザンレーヴの猛追を余裕を持って振り切った毎日杯の勝利は“確約”されていた。
無論、今回は府中マイルのGI決戦。アラを探せば多少なりの不安材料も出てくると思うが、担当の戸高厩務員は「大きな体なのにすごい瞬発力がある。馬はおとなしいし、輸送も小倉で経験済み。左回りに関しても、誰が調教にまたがっても回りの得手不得手は口にしないからね。まだ引き出しはあるよ」とさらなる上積みを強調する。
鞍上の小牧騎手も、そんな未知の魅力にひかれたのだろう。毎日杯ではアーリントンCの覇者ダブルウェッジの騎乗依頼を断ってアイアンルックを選択した。
「ケイコでもレースでも“アレッ”と思わせながら、もう2段くらい伸びるのは底力がある証拠。普段はオットリしているのに競馬に行くと自分から目覚める。間隔があいて馬は元気いっぱいだし、ホント、エネルギーがたまっているよ」とジョッキーはゲートインを心待ちにしている。
一方、橋口師も「もうしゃべりすぎて何もしゃべることがない。新馬を勝った直後に重賞にぶつけたことで、もうオレの期待が分かるだろう」と自信の笑みを見せた。
アーリントンC→毎日杯のローテーションは、昨年のディープスカイと同じ。陣営の青写真はもちろん勝ってダービーへ。今年も変則2冠馬の誕生だ。