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60歳無年金時代が到来! 死を待つだけの老後難民の実態(4)

 物価が日本の3分の1のマレーシアへの移住を考えた人もいる。同国は親日家も多く、日本人会もある。高原地帯なら、ヒートアイランドとなる日本の夏より過ごしやすい。しかし死んだ後、日本への高額な輸送費などで物価安など吹っ飛んでしまう。あれやこれやの条件を考えた結果、移住はやめた。
 では、日本の田舎暮らしならどうか。

 定年後すぐ、中国地方のある町に移住したMさん夫婦(69、66)は3年で東京に戻った。田舎では地域との助け合いは不可欠だから、いつも集まって大酒を飲む。この習慣になじめなかったのだ。また、夫婦どちらかが田舎暮らしに合わず、片方が東京に戻ってしまうこともある。田舎生活に本当になじむまで、元家を売らない方が無難だ。

 長年の会社勤めで故郷から離れており、定年を機に戻っても仲間がいないという“地域デビュー”という悩みもある。Nさん(65)は、夫婦で庭造りをすることで近所との話題が生まれ、その延長でガーデニングクラブにそろって参加することで交流が生まれた。ライトアップした庭で、仲間と酒宴を楽しんでいる。

 リタイア組がうらやむ“2世帯同居”でも悩みがないわけではない。1階に息子夫婦が住み、2階に老夫婦が住むOさん夫婦(67、65)の場合はこうだ。息子夫婦は「共働きだから」と孫の世話を押し付ける。孫はかわいいからいいが、おやつを与えると「勝手にあげないでください!」と嫁が怒る。孫を囲んで週1回くらいは夕食をと願うが、それも果たせない。1階にある風呂に入る時間帯が決められており、早くても遅くもダメ。“安らぎの家”とは程遠いが、逆にこの仕打ちを夫婦で慰め合うようになって昔より仲が良くなったという。

 厚生年金が年300万円。60歳で定年退職し、3カ月後に失業保険ももらわず、月10日ほどの出勤契約で働き始め、その後、日当1万2000円で週3日(年収約200万円)個人事業主として働くPさん。青色申告者として開業届を税務署に出し、年間所得は厚生年金と合わせると500万円に達し、本来なら相当な納税額になるはず…。だが、事業所得として確定申告することで、40万円くらいの還付金を受け取ることができるという。これは裏ワザだ。

 普通の人が年金との付き合いを考える場合に大切なことは「もらえる以上は使えない」という単純な事実だ。人生の“最後”の日々を、ひたすら生活防衛をして耐えるしかないとすれば、偽りの“長寿の国”と言わざるを得ない。

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