こんなメールが届いた。キャバ嬢だということは分かる。しかし、誰かが分からないでいた。私の携帯電話は、「電話帳」に登録していない人からのメールは「迷惑メールフォルダ」に入るのですが、まさに、このメールは、そのフォルダにたまっていた。
誰だろう、と思って、アドレス検索をして、過去のメールを探してみました。すると、はっきりはしないのですが、「K」という店で会った嬢だということが分かった。ただ、顔をよく思い出せない。ということは、それほど印象に残らなかったということになるが、過去のメールを読んでいると、親近感が湧いてきたのです。
そう思うと、気になるものです。メールを送ってみたが、返事がない。普通なら、ここで何も考えずに、店にも行かないのですが、なぜか、過去のメールのやりとりが気になっていた。そのため、返信がなかったものの、店に行ってみることにした。
「K」に行って思い出したのだが、しばらくこの店に来ていないものの、
「別の指名嬢がいたんだ!」
と恐る恐る席に座った。この段階では指名嬢を探すことはできなかった。この夜は出勤していないのだろうか。一応、店に入る前にメールを送ってみたが、これまた返事がない。休みなのかもしれないと思ったのでした。
そうしているうちに、メールをやりとりしていた嬢がやってきた。そこで、思い出した。ただ、この嬢だったとは意外な感じがした。なぜ、この嬢とのメールで店に来たいと思ったのだろうか。話しているうちに分かったのは、打算がない気がしたからだった。そういえば、かつてこの「K」は、営業を仕掛けるギラギラしている嬢が多かったが、この嬢は自然体だったのだ。
その時だった。私が座っている前を、指名嬢が通り過ぎたのです。こちらを見ていなかったので、気がつかなかったのかもしれない。でも、あの距離で気がつかないはずもない。3席ほど離れて指名嬢が座っているが、陰になり、はっきりとは確認できない。結局、気がつかなかったのか、翌日、メールの返事があったが、このことには触れていなかった。
さて、メールをくれた嬢だが、このときも癒し系の会話が流れていた。ただ、またも海外旅行に行くのだという。理由としては、もう25歳ということもあり、夜の仕事は辞めたいのだという。その「仕事納め」として、最近、旅行を繰り返しているのだといいます。
帰宅後、こんなメールが返ってきた。
<お店に来てくれてありがとう。これからも仲良くしていきたいです。ハワイから帰ったら、また連絡するね>
<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。
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