「コインランドリーは、かつては学生や単身の男性が利用客のメインでしたが、今の利用者は女性、特に主婦が増えています。市場が拡大しているのは家庭の主婦のパート就労率が高くなっていることが大きいですね」(業界関係者)
総務省が7月に発表した「2017年・就業構造基本調査」によると25歳から39歳の働き盛りの女性就業率は75・7%と過去最高。2012年の調査から5.9%もアップしている。さらに15歳から64歳女性の有職率も68・5%と前回調査よりも5.4ポイントも伸びた。これを受け、前出の業界関係者が指摘する。
「これだけ女性が外で働くとなると、なかなか毎日、洗濯にまで手が回らない。土日にまとめて洗濯しようとしても、家庭用洗濯機では時間がかかるし、干場も限定される。また天気が悪いとさらに滞る。コインランドリーでは、機械の向上などで洗濯から乾燥まで1時間足らず。しかも1回ですべて洗えるので、働く女性にとっては効率的で便利このうえない。それが施設数増、市場拡大につながっているのでしょう」
「機械の大型化」によって、布団や毛布など、家庭では洗濯が難しいものの丸洗いができることも、利用客増加につながっているという。
「クリーニング店に布団や毛布の丸洗いを依頼すれば結構な価格。それよりもリーズナブルな価格で丸洗いができるコインランドリーを利用する人が増えていますね。そのため、経営側も20〜30㎏のものが洗える大型機械を増加させています。つまり今のコインランドリーは、スニーカーから布団まで、家庭の洗濯機で手に余るものは、ほとんど洗うことができます」(同)
利便性が高くなっているコインランドリーだが、それでも抵抗がある人は多い。主な理由は「衛生面が心配」「待ち時間を持て余す」「夜の防犯面が不安」などがある。そういった抵抗感がある人の緩和策と誘客に企業側も力を入れている。
九州を中心にFC展開し、店舗数が537店舗のコインランドリー業界最大手のWASHハウスは、全店舗をIT化し、WEBカメラによってセキュリティー面を高め、安心安全のコインランドリーを目指している。
「コインランドリー機器の遠隔管理システムによって、トラブルにも即対応できます。また、店舗運営や売り上げを一括管理することで出資者負担を大きく軽減、オーナーは最初に資金だけを出せば、ほぼ店舗運営に関与しないで済むのも人気を高めています」(同)
WASHハウスに追いつき追い越せが「マンマチャオ」。2018年夏に500店舗達成、2020年までには1000店舗を目指す。同社は洗剤にヤシの実石鹸、水はマイナスイオンを帯びたお湯(ぬるま湯)にこだわり、清潔で環境に優しいエコランドリーを主張し、女性客の人気を集めている。
ソーシャルアパートメントを展開するグローバルエージェンツが運営する都内江東区白河の「ソーシャルランドリー」も注目されている。
「リノベーションされた10階建てアパート1階におしゃれなコインランドリーとカフェを併設。待ち時間を有意義にすごせるだけでなく、他の客と交流ができたり、『シミ落とし講座』といったイベントも開き、コインランドリーをソーシャルな場所として提供しています」(同)
伸びる業界と睨みコンビニ業界も動く。ファミリーマートは3月、千葉県内でコンビニ敷地内にコインランドリーを併設。続く5月、都内コンビニ内にコインランドリーを入れた一体型施設をオープン。名付けて「ファミマ ランドリー」だ。'19年度末に300店展開予定だという。
「コンビニと一体のため、女性客でも安心して利用できるセキュリティー面、さらに空き時間を事前にスマホで確認できるなど、利便性も高い。コンビニ利用が落ちる雨の日は逆にコインランドリー利用客が増え、コンビニで買い物もしてくれる。相乗効果も抜群なので、今後は増えていくと思います」(経営アナリスト)
さらに、コインランドリー業界は外資系企業の参入も相次ぐ。ドイツ発祥で都内目黒にオープンした「フレディレック・ウォッシュサロン」は、コインランドリーの場でカフェ、物品販売、クリーニング、ミニライブまで展開する。
外資や他業種が続々参入している国内のコインランドリー業界。市場争奪戦が激しくなりそうだ。