当初、香港の新聞『サウスチャイナ・モーニングポスト』は、情報筋の話として孟総裁が中国に一時帰国した際、当局に連行されて取り調べを受けていると伝え、以後、日本でも同様の報道が行われた。ICPOは中国の政府機関ではなく、国際的な役割を持っているのだから、そのトップをいきなり拘束するというのは、自国の一女優を拘束するのとはワケが違う。
そして今回、また1人の中国要人が消えた。その名は李勇鴻(り・ゆうこう)、イタリアのサッカー1部リーグ『ACミラン』を2017年に、前オーナーだったベルルスコーニ元首相から4億4000万ドルで買い取り、一躍その名を世界に知られた人物だ。
とはいえ、李は孟総裁や脱税騒動で注目された女優ファン・ビンビンのケースとは事情が異なる。
「李勇鴻は中国の経営者によくある詐欺師、ペテン師の類いでした。実際、ACミランの買収資金のほとんどは支払われておらず、最近になって米国のファンドが買収したくらいです。10月18日に中国湖北省の地方裁判所は、李を債務不履行、借金踏み倒しにより起訴しています。ただし本人の所在はつかめておらず、雲隠れしたままの起訴となりました」(在日中国人ジャーナリスト)
裁判所は、李のパスポートを手配して、出国禁止の措置を取り、さらにクレジットカードは無効、その上、全土の豪華ホテルにもブラックリスト掲載の通知を出している。
「こうした経済事件は李だけがターゲットではありません。香港証券取引委員会は、10月18日にインサイダー取引、不法送金などで10名の大物詐欺師の手配を公表しています。驚くことにそのうち3名が企業CEO、2名が大企業の元取締役、そして残り5名のうちの3人がインサイダー取引の容疑です。中でも服飾大手『福建ヌオギ』のデン・フイ前CEOは、14年7月から所在不明となっており、不法に持ち出した金は2億3200万元といわれます。この他、18年9月までに、会社倒産、閉鎖、事業停止などで訴追された件数は60件に達しており、香港当局は、10名に加え20名を近く訴追するということです」(同・ジャーナリスト)
日本のバブル紳士といわれた一群の詐欺師たちもビックリだ。