実写映画『あしたのジョー』に早くも続編待望論

トレンド 2011年02月17日 14時00分

 2月11日に公開された実写映画『あしたのジョー』(曽利文彦監督)の評判が高い。映画の観客からは早くも続編の待望論が出ている。

 『あしたのジョー』は高森朝雄(梶原一騎)作、ちばてつや画で『週刊少年マガジン』に連載されていたボクシング漫画が原作である。人気漫画の実写化は当たり外れが大きい。特に往年の人気漫画の実写化ということで、原作に思い入れの深いファンの反発も予想されたものの、役作りのために過酷な減量までした矢吹丈役の山下智久や力石徹役の伊勢谷友介の努力が評価されている。再現されたドヤ街の雰囲気も迫力がある。

 一方でボクサーとしての役作りは評価するものの、原作の持っていた悪のリアリズムまでは演じ切れていないとの声もあった。ジョーを筆頭に原作の登場人物は、揃ってエゴイストでワルである。各々が身勝手な論理で動いている。それが物語のリアリティになっていた。

 また、映画オリジナルの白木葉子(香里奈)の設定については賛否が分かれた。白木ジムのオーナーである葉子は原作では優等生的な令嬢であるが、映画では屈折したところがある。映画では葉子はドヤ街出身という秘められた過去があり、そのコンプレックスからドヤ街を潰して再開発を進めようとする。

 ドヤ街で生活する人々は再開発によって立ち退きを迫られ、生活が破壊される。ここにおいて白木財閥とドヤ街の人々という大企業と庶民の対立軸が明確になる。この構図は現代の再開発や区画整理と同じである。貧困や差別を直視する梶原一騎作品の社会性を、現代人にも分かりやすく伝えている。

 しかし、再開発の動機を葉子の生い立ちに求めたことで、普遍性がある街づくりの問題が葉子個人の成長物語に矮小化された感がある。成長物語を矮小化とする理由は、葉子がドヤ街を認めるようになったところで、それは自分の中のコンプレックスを克服しただけだからである。再開発によって生活を破壊され、対立の主役となるべきドヤ街の人々は、依然として物語の風景でしかない。

 原作は持つ者と持たざる者の対立が背景にあり、一貫して持たざる者の側に立っていた。ところが、映画は葉子の物語が加わったために持つ者に感情移入し、その成長を見守るような視点の揺れが生まれてしまった。そのために葉子の独自設定自体が不要との意見も少なくない。

 この点は続編を考えれば意味が出てくる。映画ではドヤ街の住人にオリジナル・キャラクターが追加されている。宿屋の女主人・花村マリ(倍賞美津子)である。しかし、大物女優を起用した割には見せ場がなかった。ロードワークを眺め、試合の観客となる程度である。これで終わってしまうならば、役どころが理解できない。続編で葉子とマリの秘められた接点が明かされ、葉子が真の意味でドヤ街と向き合う伏線ではないかと期待する声がある。

(林田力)

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