「自分の眼で見たものしか信用しない」
中日・落合博満GMはそう主張し、全国行脚しているという。スカウトの報告を疑っているのではない。「自身の眼で直接確かめる」とし、隠密行動を続けているのだ。
「落合−谷繁体制が発表された際、セ5球団は落合GMのカラーがグラウンドに色濃く反映されると読んでいました。ところが大方の予想を裏切り、落合GMは球場には全く顔を出していません」(ベテラン記者)
もちろん、谷繁元信兼任監督、腹心の森繁和ヘッドコーチともに「内々に連絡を取り合っている」と予想されているが。
「落合GMの監督時代の不気味さは阪神も痛いほどよくわかっています。落合GMが表舞台に出てくれば、対抗策も練りやすいのでしょうが…」(同・記者)
近年の阪神は中日を苦手にしている。昨季は12勝11敗1分けと辛うじて勝ち越したが、'12年は7勝16敗1分け、'11年と'10年は9勝13敗2分けとカモにされてきた。今季は前半戦を終了した時点で7勝7敗1分け。
阪神が原巨人を追い抜くには“苦手中日”を克服できるかどうかにかかっているのだ。
「中日との相性は確かに良くない。それに加えて、今季は落合GMを意識し過ぎているように思える」(在阪トラ番記者)
阪神は前半戦の最後に中日と対戦。3連戦を2勝1敗と勝ち越し、対戦成績を五分に戻した。開幕からカードの頭に先発させていた藤浪を2戦目に回す“奇策”がハマった格好だ。
「和田監督になってから阪神のスコアラーはチームごとに張り付く担当制になった。中日の野球はどちらかというと正攻法。だから、逆に『何か仕掛けてくるのでは?』と考えてしまい、常に対策を講じる状況に追い込まれている感じ」(同・トラ番記者)
相手ベンチに「何か仕掛けてくる」の恐怖を与えるのは、落合GMの得意技だった。その落合GMが姿を見せないことで、阪神サイドは疑心暗鬼になってしまう。担当制スコアラーが裏目に出た試合もあった。
5月7日、中日の先発予定だった川上憲伸が試合前のアクシデントで投げられなくなり、中日は2年目の左腕・濱田達郎を緊急登板させた。濱田の情報を持っていなかった阪神打線は、プロ初先発で初勝利&初完封を献上。以後、濱田が阪神戦に先発していないことも、「次はいつか?」と恐怖になっているそうだ。
「故障で出遅れていた吉見も帰って来て、中日は遅まきながら着実に戦力を整えつつある」(同)
濱田の勝ち逃げは、落合GMが伝授した陽動作戦ともいわれている。考え過ぎるよりも、打ってナンボが阪神の魅力だと思うが…。