(62歳・アルバイト)
A:普段の姿勢がよくないということは、歩き方がよくないことにも関係しているでしょう。
万歩計を携帯して歩くと、とかく歩数にこだわり、1歩でも歩数を増やそうと必死に歩くものです。そうすると、私見ですが、顎が前に出て顔は下を向き、姿勢は前傾で背中は丸くなります。ちょうど、クワを手に持って畑仕事をしている態勢と同じです。
こういう歩き方でウオーキングしている高齢の人は、珍しくありません。このような歩き方がなぜよくないかというと、体の前側の筋肉しか使っていないからです。
●後ろ側の筋肉を使って歩く
では、どういう歩き方をすればよいかというと、胸を張って、背筋を伸ばします。そして、少し大股で歩きます。
背筋を伸ばすとは、お腹や腰の上方を上に上げる感じです。かかとから着地し、足の指で蹴り、前に進みます。腰から前へ移動する感じです。
こういう歩き方は、体の後ろの筋肉、太ももの裏側やお尻、背中の筋肉を使います。歩いて前に進むための筋肉は、後ろ側の筋肉です。
背中側には脊柱起立筋などの深部筋肉が分布しています。この筋肉は、脊柱や胸部、骨盤につながっています。そして、重力に抗して体を引き上げ、姿勢を保持する役割を担っています。つまり、抗重力筋の1つです。
加齢や運動不足によって、抗重力筋の働きは低下します。すると、上体を起こした姿勢でいるとすぐに背中が疲れ、姿勢が悪くなるのです。
それが前述したような歩き方に変えると、背中側の筋肉が使われます。筋肉の力も借りて前進するので、これらの筋肉が鍛えられます。
ご質問の方が腰痛になるのも、つまずきやすいのも、歩き方が原因として関係しているのでしょう。まずは、歩き方を変えてみてください。
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岡田研吉氏(研医会診療所漢方科医師)
東邦大学医学部卒。ドイツ留学中に東洋医学に関心を持ち、帰国後、国立東静病院で漢方を学ぶ。独自の漢方処方で生活習慣病等に成果を上げている。著書『さらさら血液が長生きの秘訣』など多数。