本来ならロンドン五輪以上に狂喜乱舞するところだが、盛り上がりに欠けたのは、香川のレギュラーポジションが危うくなったからである。
「貪欲なまでにプレミア奪回を目指すマンUは開幕1週間前になって、昨季リーグの得点王だったオランダ代表のファンペルシーをアーセナルから獲得して、香川中心だった戦略を一変させた。香川の移籍金は1700万ポンド(約21億1000万円)ですが、ファンペルシーは2400万ポンド(約29億8000万円)。クラブがどちらを優先させるかは、おのずとわかる」(サッカー専門誌記者)
なぜ、マンUは香川に冷淡になったのか。実は、日本代表戦に大きな要因があったという。
「ベネズエラ戦です。プレミアリーグ開幕前の大事な時期に親善試合で4日間も日本に戻った姿勢がクラブ首脳の怒りを買ったのです。ベネズエラ戦が行われた8月15日にファンペルシーの獲得を発表したのは偶然ではない。欧州のクラブでは代表戦より、リーグ戦が重要視され、ファンの人気も高い。6月のアジア最終予選を2勝1分けの首位で終えた日本代表は9月11日にイラク戦を迎えますが、尻に火がついた香川は召集を辞退する可能性がある。またぞろチームを留守にすれば、居場所を失いかねないし、期限付き移籍の可能性すらある」(元日本代表のサッカー解説者)
マンUの場合、プレミアリーグ38試合のほかに欧州チャンピオンズリーグ、FAカップなど年間計60試合近くをこなす。ハードな日程のため、エースのルーニーですら年間の出場試合は30数試合。チームに専念しさえすれば、香川の出番はルーニー、ファンペルシーと同列になる可能性はあるわけだ。
「先のベネズエラ戦では後半29分から初めてトップ下の本田圭佑(CSKAモスクワ)の1トップを試したが、その際、空いたトップ下には香川ではなく、敢えて中村憲剛(川崎)を付けた。このことはとりもなおさず、香川不在の場合のイラク戦を想定している」(スポーツ紙記者)
マンUで不動のポジションを勝ち取るまで、日本代表での香川の雄姿はしばしお預けのようである。