シアトル・マリナーズが岩隈久志投手(37)の今季限りでの退団を発表した(9月11日/現地時間)。岩隈は第三者を介してだが、「日本復帰も視野に入れている」と発言し、楽天の立花陽三球団社長も「しっかり調査させていただく。個人的には迎える準備はあると思っている」と、敏感に対応した。古巣帰還…。しかしこの話、スンナリとはまとまりそうにないのだ。
「岩隈は昨年9月、右肩にメスを入れました。その影響で今季も大きく出遅れ、5月にはマイナーでの実戦登板を果たしたものの、完全復帰にはほど遠い状態でした。マリナーズは『もう待てない』と、判断したんです」(特派記者)
事実上のクビだ。それに異を唱えたのが、マリナーズ球団会長付特別補佐のイチロー(44)なのだ。
「岩隈は一見、ノホホンとした雰囲気ですが、実際は違います。イチローはリハビリ中の練習熱心さ、対戦打者の研究に余念のないマジメさを高く評価しています」(同)
イチローは滅多なことでは他人を褒めたりしない。そのクールガイが認めたとなれば、話は違ってくる。イチローと定期的に連絡を取り合っているオリックスも争奪戦に参戦するだろう。
「思い出されるのが、'04年のオリックスと近鉄の合併劇。新規参入の楽天と両チームの選手が分配ドラフトにかけられ、当時の岩隈は『楽天に行きたい』とダダをこね、今日に至っている。『帰って来い』と交渉されたら、岩隈も無視できない」(ベテラン記者)
楽天のゼネラルマネジャーになった石井一久氏も元メジャーリーガー。米国にネットワークがあるとされ、イチローとの駆け引き争いになるのは必至だ。
また、関係者によれば、新旧の日本人メジャーリーガーの中で、もっとも発言力を持っているのは、長谷川滋利氏だという。その長谷川氏の肩書は、オリックスのシニアアドバイザーで、マリナーズOBでもある。石井GMも岩隈獲得に失敗すれば、就任早々に求心力を失ってしまう。
「先発投手が不足している巨人、阪神、中日あたりも調査してくるでしょう。岩隈の代理人は日本事務所を開く際、元楽天職員のサポートを受けています。その点では楽天が一歩リードと言えますが、代理人はビジネスライクに徹する性格で、もっとも条件のいいところと話をし、それを岩隈に伝えるだけ。実際、世代交代の進んだ楽天に帰還しても出番は少ない。岩隈はシアトル郊外に購入した自宅を手放そうとしません。引退後も米国に滞在し続けるようで、『古巣』だけが交渉の切り札になるとは考えにくい」(同)
とはいえ、石井GMにもメンツがある。楽天の新規参入時を知るベテランの他球団流出は避けたいところ。
イチロー&長谷川氏との駆け引きも興味深いが、実戦復帰も不安な岩隈は来年38歳になる。そもそも本当に戦力になるのかどうか、疑問は残る。