6番人気のローレルゲレイロが長い長い写真判定の末、外から猛然と追い詰めたビービーガルダンをハナ差(1センチ)しのぎきった。
高松宮記念が完勝だったとすれば、スプリンターズSはまさに辛勝だった。その象徴といえるのがスタートの内容だ。春先は馬なりでスッとハナに立っていた現役屈指の韋駄天(いだてん)が、今回は鞍上の強引な“しごき”でようやく先頭に出るイマイチな行きっぷり。同タイプのアルティマトゥーレが途中で引く幸運がなければ、おそらくすんなりと「定位置」は確保できなかった。鞍上の藤田騎手も「行くので精いっぱいだった。いつもの二の脚がなかった」と振り返ったほどだ。
ただ、ここからがGIウイナーの底力。モッサリと映ったスタートだったが、高松宮記念が前半3F通過33秒1だったのに対し、今回はそれを上回る32秒9というハイペース。加えて、「春に比べて良くなかった」と昆調教師が明かす万全とはいえない状態で驚異的な二枚腰を使うあたり、やはり、ただものではない。
この走りには、藤田も「セントウルS(14着)が負けすぎだったので正直、信用していなかった。状態も良くなりつつある段階だった。馬をほめるべき」と驚きを隠せない。昆師も「今回も体重が減っていたのでどうかなと思っていたけど、直前追いでジョッキーが『気が入ってきた』と言っていたように気で走るタイプ。GI馬の意地を見せてもらった」と脱帽した。
今後は暮れの香港スプリントを最大目標にローテーションが組まれる。現時点では現地で行われるTRレースを使うことが有力だという。
ただ、順風満帆とはいえないのが、先にも述べたゲートの出の悪さだ。藤田も「今日は勝てたが、これでは速いのがいたらハナさえ奪えない」とハッキリと指摘する。
世界を制するには、春のスピード、行きっぷりを取り戻すことが最優先。栄えある春秋のスプリント王に輝いたとはいえ、陣営にとっては気の抜けない日が続きそうだ。