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やくみつるの「シネマ小言主義」 必見!アフリカの大地と少年の知恵と勇気「風をつかまえた少年」

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提供:週刊実話

 時は2001年。アフリカ大陸の南東部に位置する内陸国マラウイ。広大なアフリカの中でも最貧国の一つである小さな国で、頭脳と手だけを頼りに風車を作り、干ばつに苦しむ村に水を引いて、飢饉から救った少年ウィリアムの映画です。

 世界の僻地へ旅するのが趣味の自分は、アフリカ諸国にも何度も足を運んでいて、マラウイにも7年前に行きました。この話を知っていれば、彼の村を訪ねたのに。風車と、彼の功績によって青々と茂る一面のとうもろこし畑を見てみたかったです。

 ウィリアムは、せっかく通い始めた中学校も学費が払えず、すぐに退学になります。せめて好きな理科だけでも学びたいと願いますが、それもかなわず。唯一、使わせてもらえた図書館とも言えないほどのスカスカの本棚から、見つけ出した1冊のエネルギーの本を読み、風車を手作りすることを思いつくのです。

 それまでも、器用な彼は、廃物を利用して村人のラジオの修繕を請け負ったりしていましたが、鉄クズの山から必要な部品を見つけて実に器用に活用します。この廃物利用は、アフリカに行くとよく見られる光景です。車なんかもしょっちゅうエンストしますが、その辺にあるもので急場を凌ぐのがうまい。

 一方で、この映画で改めて感じたのは、自分はとことん無力だということです。修理はおろか、配線一つ、できやしません。先日もDVDプレーヤーの調子が悪くなって買い替えたのですが、業者の人に、スイッチを押せば映るところまで丸ごとお任せする始末です。

 心の底から学びたいと熱望する健気なウィリアムの姿を見ていると、「学校に行かないのも選択肢の一つ」などと言い出している今の日本社会に対して、何を言ってるんだとアホらしくなります。

 映画の撮影は、究極のリアルを求めて、この驚くべき話が実際にあったマラウイで行われました。

 熱帯林が伐採されて、干ばつや洪水に苦しむアフリカの現実。壮大な自然の恐ろしさと美しさが画面から迫ってきて、アフリカ好きの私にはたまりません。

 自分が初めてこの国を意識したのは、子供の頃に集めていた2種の切手を通してでした。一つは色鮮やかなカンガ(布)をまとった母親が赤子を抱いている絵。もう一つは国土の20%を占めるマラウイ湖の絵でした。

 憧れていたマラウイに行けたのは、あの頃から50年後でしたけど…。

 この映画を見たら、きっとアフリカに行きたくなるし、かの地の子供たちを応援したくなるはずです。

画像提供元:(c)2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION /
 THE BRITISH FILM INSTITUTE / PARTICIPANT MEDIA, LLC
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■風をつかまえた少年
監督・脚本・出演/キウェテル・イジョフォー 出演/マックスウェル・シンバ、アイサ・マイガ 配給/ロングライド 8月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開。
■2001年、アフリカの最貧国の一つ、マラウイを大干ばつが襲う。14歳のウィリアムは飢饉による貧困で学費を払えず通学を断念するが、図書館で出会った1冊の本をきっかけに、独学で風力発電のできる風車を作り、乾いた畑に水を引くことを思いつく。しかし、いまだに祈りで雨を降らせようとする村では、最愛の父でさえウィリアムの言葉に耳を貸さない。それでも家族を助けたいという彼のまっすぐな想いが、徐々に周りを動かし始める。

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やくみつる:漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。『情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)、『みんなのニュース』(フジテレビ系)レギュラー出演中。

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