気象庁は竜巻注意情報を5年前から出しているが、予測が難しく精度はまだ高くない。「地球温暖化で今後突発的な竜巻やゲリラ豪雨は増える」と専門家も警告する中、今後懸念されるのが、海上で発生した竜巻が平野を襲うパターンだ。
幸い上陸はしなかったが、昨年11月にはオーストラリアで海上竜巻が発生。海水を空高く舞い上げるモンスター竜巻が20分間観測された。中国の広東省珠海市金湾区の海域でも、今年の8月31日に高さ200メートル以上の巨大水柱が計20数分間にわたり荒れ狂った。
果たして、東京湾でも発生する可能性はあるのか。防災に詳しいジャーナリストの村上和巳氏が言う。
「東京湾での海上竜巻発生は、理論的には考えられます。陸上の竜巻は木造家屋を吹き飛ばしますが、海上竜巻は海水を撒き散らす。水は家屋より重量が重いので、上陸しても長くは持ちません。しかし、沿岸部に海水を降らせるので、そのダメージがあるはずです。東京湾の沿岸部には、工業地帯が広がる。上陸すれば、工場は大量の海水を浴びて操業がストップし、かなりの経済的ダメージを被るでしょう。中でも、東京電力の火力発電所が非常に心配です」
つまり、人的被害より経済的損失を被る可能性が大きいというわけだ。ともあれ、日本の原発はいずれも沿岸部にあり、海上竜巻が襲うことは大いに考えられる。
「怖いのは、原発敷地内にある鉄塔や非常用の電源車が吹き飛ばされてしまうことです。もし、そんなことが起きれば、電源喪失で福島第一原発の事故の再来になります」(同)
来年は、より一層の警戒が必要だ。