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大手百貨店 夏物セール開始時期分散で大惨敗のこれから(2)

 それもムベなるかな、廣内理事長は5月の連休直後、すなわち三越伊勢丹がバーゲン後ろ倒しを発表した半月後に、日本百貨店協会主催のパーティーで「昨年秋、クリアランス(バーゲン)の時期是正を申し入れたところ、迅速な対応をしていただき感謝しております」と謝意を述べた。ではアパレル側がバーゲン実施の先送りを要請した理由は何か。
 「実をいうとアパレルメーカーはデパートよりも業績が厳しい。利益を向上させる特効薬は、人気商品を正規価格で売りまくることです。ちょうど暑くなる7月初めに、まだまだ人気が見込める夏物衣類を3〜4割引で売れば儲からない。そこで開始時期を遅らせれば利益増に直結する。もともとデパートは、価格決定や販売現場をアパレルに依存する傾向が強い。それを逆手に取ったアパレルが三越伊勢丹を自陣に引き込み、その余勢を駆って他のデパートも巻き込むことで業績回復のカンフル剤にしようともくろんだのです」(前出の業界関係者)

 ここで興味深い事実が浮上する。早々と今年冬のバーゲンも、通常より半月遅れて来年1月中旬での実施を表明した三越伊勢丹だが、その7月実績の中身については「定価品の売上高はセールを遅らせたことで5%増加した」というのだ。この間、旗振り役を担ったオンワード樫山も7月売上高実績は20%増となった。これを踏まえて両社は「消費者に(遅めのバーゲンが)一定の理解を得られた」と自画自賛するが、ライバル百貨店OBは冷ややかだ。
 「アパレルメーカーはデパートの足並みが揃わない場合を想定して手を打った。7月初めに定価品を3割値引きして売るよりも、当初から3割安い新商品を提供すればバーゲンセールと同じ効果が出る。これだと実際には値引きしていないため、時期を遅らせた三越伊勢丹の店頭にも並べられた点がミソです」

 それでも今年の夏バーゲンは各社揃って厳しい現実に直面した。早めのセールに慣れた消費者の購買意欲が一気に衰退したのか、はたまたアパレル業界と三越伊勢丹に代表される大手百貨店の怪しい二人三脚に怒りの矛先を向けたのか…。
 世間をあざ笑うかのように、三越伊勢丹は来年の冬物セールを1月18日から実施。例年通り1月早々からと表明している高島屋、大丸松坂屋などとは一線を画している。これが吉と出るか凶と出るか。ただでさえジリ貧の一途をたどる業界のこと、これを機にまたも再編の嵐が吹き荒れそうだ。

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