この配分に関し、国交省は「JALの場合、公的支援を受けていた期間は評価に値しないため」と突き放したが、情報筋によると、当初「ANA7枠、JAL6枠」のシナリオが描かれていたという。要するにJALの背後で目を光らせていた民主党政権の惨敗が視野に入ってきたことから、自民党に擦り寄る作戦に切り替えたのだ。情報筋が苦笑いする。
「誤解のないように言っておくと、自民党はANAベッタリではありません。といってJALを目の仇にしているわけじゃない。ただ、民主党政権の成功例とされる『JAL再生』を快く思っていないのです」
羽田の発着枠は1枠当たり年間30億円前後の増収に直結するという。国交省の“裏切り”の分、JALは当初のもくろみに比べて大幅減収が避けられない。
それでなくても再上場を前にした「仕組まれた業績のV字回復」(前出の経済記者)とは裏腹に、'13年3月期のJALは連結純利益が前期比25%減の1400億円まで落ち込む見通し。そんな矢先、羽田の発着枠でANAに出し抜かれたとあっては、植木義晴社長ならずとも屈辱でしかない。
「これで業績が低迷し、株価が急落すれば投資家は黙っていません。とりわけ再上場後は外国人投資家が4割近くを占めており、彼らが決起したら相当に手を焼く。しかし、JALの経営陣がそこまで腹をくくっているかとなると怪しい限りです」(地場証券役員)
実は上場廃止に追い込まれた当時のJALと、現在とでは株主構成が大きく変わっている。地場証券役員が続ける。
「再上場を陣頭指揮した稲盛さんは、商社や銀行、さらには航空燃料を扱う石油元売り会社など安定株主の候補となる50数社をリストアップし、首脳陣が手分けして積極的に交渉したのですがうまくいきませんでした。経営破綻し、100%減資で出資マネーをドブに捨てざるを得なかった株主企業とすれば、いくらビジネス上の付き合いがあるといっても、自社の株主にどう説明すればいいかの問題もあって二つ返事では応じられなかったのが実情です」
存在感を増している外国人投資家にしても、航空法の定めで外国人の議決権割合は3分の1以下に抑えられている。配当を含め、この扱いをどうするか。そこへ“株安”の洗礼を浴びれば、JALには非難が集中し、それこそパニック地獄に陥るという観測もある。
JAL経営陣の苦悩は深まるばかりということか…。さぞかし、民主党の凋落が恨めしいに違いない。