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抗うつ薬SSRI 凶悪事件との因果関係

 SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬が社会問題になっている。これまでの三環系の抗うつ薬と異なり、のどが渇くといった副作用がなく画期的な効果があるとされる。だが、元気になる患者がいる半面、自殺衝動にかられることが問題となっていた。さらに、ここへきて他人に危害を加える可能性があるという重大な副作用が判明したのだ。

 事態は深刻だ。厚労省医薬食品局安全対策課は5月8日、SSRIに他人に対して攻撃的になる可能性があることを記した注意書を添付することを決めた。異例の措置を取ったのは「製薬会社から、この4年半の間にSSRIの服用で42人が他人に攻撃的になる副作用が認められたと製薬会社を通じて報告があったから」(厚労省安全対策課)という。
 国内で100万人以上が服用しているSSRIが認可されたのは約10年前のことだ。日本で販売されているパキシル、ルボックス、デブロメール、ジェイゾロフトのほか、プロザック、ゾロフト、セレクサなどがある。
 「87年に米国でプロザックの販売がスタートすると、ハッピードラッグと呼ばれ、性格改善薬としても使用されたいきさつがあります。世界で3500万人以上の人が服用しています」(精神科医)

 とりわけ、パニック障害の特効薬として広く使用されている。だが、安易に処方されるようになったため、弊害も目立つようになった。
 「副作用の代表はコロンバイン事件です。米コロラド州のコロンバイン高校で高校生2人が銃を乱射し、生徒13人と教師1人を射殺した。犯人の1人はルボックスの常用者だったのです」(前出の精神科医)
 日本でも全日空ハイジャック事件の西沢裕司被告が事件を起こす1年前からSSRIを服用し、犯行時は「躁(そう)と鬱(うつ)の混合状態」にあったという。さらに、比較的最近起こった重大事件の犯人もまたSSRIを服用していたことが明らかになったのだ。
 「06年に川崎市多摩区の団地で起きた小学生投げ落とし事件では、子供好きの犯人がなぜそのような凶行に及んだのかが焦点となったが、SSRIの服用が判明した。そのほかにも、京都の塾講師による小学6年の女児殺害事件(05年)、愛知県の元暴力団員が立て籠もって県警『SAT(特殊急襲部隊)』の隊員を殺害した事件(07年)、ドン・キホーテ放火事件(04年)、福岡男児殺害事件(08年9月)でも被告がSSRIを服用していた」(医療ジャーナリスト)
 こうした刑事事件とSSRIの服用との因果関係はすべて明らかになったわけではない。厚労省安全対策課では「個々の事案を見ると、患者が起こした行動がその人がもともと持っていた気分変動によるものなのか、薬の影響なのか、きっちり結論付けることは難しい」と話す。
 だが、重大事件の犯人がこうもこの抗うつ薬を常用していたとなると、偶然とも言い切れない。薬害を監視するNPO法人「医療ビジランスセンター」代表の浜六郎医師は言う。
 「プラセボ(ニセ薬)とSSRIを使った臨床試験ではSSRIを服用した人が攻撃的になる頻度が高いことがはっきりする。小児の場合、プラセボの7倍にも達する。メーカーや厚労省はこの事実を握っているんですから、きちっと公表すべきです」
 日本弁護士連合会では会員弁護士に対して、重大な刑事事件の被告がSSRIを服用していなかったかどうか、アンケート調査を実施している。100万人以上の人が心の平穏を託す薬だけに、早急にしかるべき結論を出してもらいたいものだ。

◎SSRI
 神経伝達物質の一つで、精神活動を支えるセロトニンを有効活用する薬。セロトニンは神経細胞の末端から放出されると、他の神経細胞に達して発火させる。それによって情報が伝わる。神経細胞間にはシナプスがあり、シナプスに放出されたセロトニンは分解され、最初の神経細胞に呼び戻される。SSRIはその再取り込みを阻害し、シナプスに蓄積させる。その結果、セロトニン神経を異常に興奮させるとされる。

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