慶応義塾大学感染制御センターが、'00年から昨年10月までに行った調査結果では、これまでマイコプラズマ肺炎に対してマクロライド系抗生物質が治療効果を発揮したが、今年はその抗生物質にとって高い耐性を持つマイコプラズマが89.5%にまで増加していることが明らかになったという。
猛威を振るっている要因は、そこにあるといえそうだ。
東京の世田谷井上病院の井上毅一理事長が語る。
「マイコプラズマ肺炎は、細菌の中で最も小さなマイコプラズマによって引き起こされる感染症です。国内で流行っている肺炎の中で約2割を占めます。幼児、学齢期の子供、青年に多い疾患で、日本ではこれまでオリンピックのある4年周期で流行を繰り返してきました。そのため、“オリンピック肺炎”などと呼ばれたこともありましたが、最近この傾向は崩れ、毎年、地域的に小流行を繰り返し、初秋から冬に多発しています」
潜伏期間は2週間ほどで、初期症状としては、発熱するとともに、全身がだるくなり、頭痛をともなうという。
「その後、3〜5日で咳が始まる。咳は長く続き、夜間や早朝に強くなる特徴があります。もともと気管支喘息がある場合、マイコプラズマ肺炎によって咳がいっそうひどくなり、喘息発作を引き起こしてしまうので注意が必要です。一度かかっても、免疫を長く維持することができない厄介者です」(井上理事長)
さらに、聴診しても、肺炎を疑うプツプツという泡がはじけるような音が発生しないので始末に悪い。
咽頭の拭い液を培養してマイコプラズマ肺炎を検出すれば、確実な診断となるものの、検査に時間がかかるため、胸部X線、周辺地域の流行状況、好発年齢(ある特定の病気にかかりやすい年齢)などを参考にして診断するそうだ。