「2012年までオールスターを開催する球場は決まっている。オールスターはなくなりません」。主催する日本野球機構(NPB)関係者は噂されるオールスター消滅危機情報を全面否定する。が、加藤コミッショナーが議長を務め、12球団の代表がメンバーのプロ野球実行委員会で、現状のオールスターに対する改革案が提案されたのは事実だ。
「交流戦が出来て、オルスターの価値観の問題がある。アジアシリーズとも絡めて総体的に見直す時期だ」と阪神が問題提起しているのも、オールスターが危機に直面しているのはまぎれもない現実だからだ。テレビ局関係者が内幕を明かす。
「新球場のマツダスタジアムで行われるオールスターの中継は早くからTBS系列で決まった。TBS系列の広島のRCCが『新球場での初めてのオールスターは何が何でも中継したい』と言っていたからね。しかも、新球場の命名権を買ったマツダがオールスターのスポンサーになっているのだから、中継はむしろ当然でしょう。
最後の最後までもめたのが札幌ドームでの試合。どの局も消極的で、一時は地上波のテレビ中継なしという前代未聞の最悪の結果になりそうでした。最終的には日本テレビ系列の中継で一件落着したが、NPB関係者は冷や汗をかいたでしょう。真偽は定かではないが、1試合1億2000万円といわれる放映権料の大幅ダンピング説まで流れていますよ。半分の6000万円ではないかという…」。
オールスターは、12球団からの拠出金、日本シリーズと並ぶNPBの重要な三大財源だ。「12球団からの拠出金が1球団7000万円で合計8億4000万円。経済状態の厳しい時代だから、値上げはできない。どこも経営が苦しい12球団が絶対に認めないからだ。日本シリーズはその年で対戦カードが変わるし、4戦で終わるか、7戦までもつれ込むかわからない。その点、オールスターは計算できる安定した財源だっただけに、なくなるような事態になったら、NPBは壊滅的なダメージを受けるだろう」。球界関係者がこう深刻な楽屋裏をぶちまける。
今年は辛うじて地上波のテレビ中継は確保したが、視聴率の結果次第では、来年の保証はない。というのも、一昨年が第1戦12.2%、第2戦8.2%。昨年も第1戦11.4%、第2戦11.3%(すべてビデオリーサーチ調べ=関東地区)と、オールスター人気の低下は歴然としている。
「1億円以上出してゴールデンタイムにやるメリットは全くない」とテレビ局関係者は言い切る。今年も低視聴率にあえげば、来年はテレビ中継なしの危機が再び訪れる。
それだけではない。さらに新たな難題がある。スポンサーの問題だ。
「オールスターは三洋電機が1988年から2006年まで冠スポンサーとなり、年間3億4000万円の協賛金を出してくれていた。が、経営危機からスポンサーを降りてしまい、その後は毎年テンヤワンヤだ。07年はヤンキース・松井がCMに出演している中古車販売大手のガリバーが1年だけのスポンサー。昨年は新車を出すタイミングということでマツダが1年契約で引き受けた。結果的には、今年はマツダスタジアムでの開催があるので、2年連続となったが、来年は降りる。その後のスポンサー探しは容易ではないだろう」広告代理店関係者はこう明言する。
テレビの放映権料に加え、スポンサーの協賛金までなくなったら、入場料収入しかなくなり、まさにオールスターは存続の危機に直面する。今秋のアジアシリーズが今まさに風前の灯火になっているのは、一昨年限りで3年契約の終わったコナミがスポンサーを降りてしまったからだ。その結果、昨年行われたスポンサーなしのアジアシリーズは3億円の赤字を出しており、パ・リーグ球団を中心に強硬な廃止論が出ている。オールスターがアジアシリーズの二の舞になる危険性は限りなく高い。問題はただオールスターには止まらないから深刻なのだ。
三大財源の一つが消えれば、NPBは財政危機に見舞われる。そうなれば、日本プロ野球界が大揺れすることになる。球界再編の動き再燃など非常事態到来の危機を迎える。たかがオールスター問題では済まなくなる。