「喉に詰まらせた食品は餅が最多で間違いではありませんが、全体からすれば20%程度に過ぎない。他に米飯(17%)、パン(13%)、魚介類(10%)などと続き、果実類も9.5%あり、少なくはありません。しかも、食品を喉に詰まらせる人は年々増える傾向にある。これは、軟らかい食べ物を口にする人が増え、きちんと噛んで食べる習慣が薄れているからです」
東京社会医療研究センターの水谷良樹理事は言う。
「食品を詰まらせたら、15分以内に取り除かないと窒息死する危険性があります。運良く助かった場合でも、脳に酸素が行かないために一部の脳細胞が死滅し、身体のマヒなど重大な後遺症が残る危険性があります。厚生労働省の調べでも、毎年4000人以上が亡くなっていて、'06年には4407人が死亡。そのうち、食ベ物による窒息事故は1327例に上るといいます。窒息事故が起きた場合は、すぐに救急車を呼んで下さい。ハイムリッヒ法(腹部突き上げ法)という応急処置が取られ、詰まった異物が取り除かれると、阻害されていた呼吸が戻り一命をとどめることができますが、後遺症が残ることも考えられます。とても怖い事故なのです」
窒息は、主に呼吸が阻害されることによって血液中のガス交換ができず血中酸素濃度が低下し、二酸化炭素濃度が上昇、内臓や身体の重要な組織が機能阻害を起こす状態をいう。
喉に異物が詰まるトラブルは、大きく分けて二つの場合がある。“食道”を塞いでしまう場合と、“気管”を塞いでしまう場合だ。異物を取り除くには、いくつかの方法があるが、どの方法を取るかは状況によって違う。まずは落ち着いて状況を見極め対処する必要がある。
「最初に、正常に呼吸ができているかを確認してください。食べ物が食道に詰まった場合などは、水で飲み込めるかどうかを試す。また、詰まった直後から言葉が出なくなったり激しく咳き込む場合は、異物が気管に入ってしまった可能性があります。異物が上手く取れないと、もがきながら顔が次第に紫色になり、やがて意識が無くなることに繋がります。そのような状態になる前に、救急車を呼ぶことが大事ですね」(消防庁関係者)
最後に、こうしたトラブルを引き起こさないためにはどんな点を心掛ければいいか。専門家に聞くと、詰まらせやすい食べ物は次のような物だ。
(1) 餅やご飯、パンなどの粘りのある食べ物。
(2) イカやタコ、キノコ類など加熱しても軟らかくなりにくいもの。
(3) 海苔やレタスなど厚みのないもの。
(4) パン、ふかし芋、などサバサバしたもの。
(5) 青菜類などの、繊維の強い物。
「詰まりやすい食べ物は、できるだけ細かく、小さくして食べることを心掛けること。水分を摂りながら食べる。また歯の喪失部分には入れ歯をしっかり入れて噛みやすくすることが大事です」(医療関係者)