梨田昌孝監督(56)が横浜から来る石井について「まずは二軍で様子を見てから」と即戦力として見ていないことを明かせば、チーム編成を預かる山田正雄GMは「リスクは承知で行ったトレード」と言い切った。梨田監督が「江尻の放出に最後まで反対した」とされ、フロントと現場の関係亀裂を伝える声もないわけではない。
プロ野球OBの1人がこう分析する。
「梨田監督を昨季、チームを優勝に導き、再契約を勝ち取りましたが、フロントとの関係亀裂を囁かれてきました。たとえば、中田翔の起用法です。フロントは『将来のため、我慢して使ってくれ』という考え方。梨田監督は『レギュラーは与えるものではなく、奪うもの』と考えています。この程度で衝突することはありませんが、いろいろなことが積もり積もって…」
放出された江尻だが、ある意味で「梨田イズムの象徴的選手」とも目されていた。江尻は故・小林繁投手コーチの勧めでサイドスローに転向している。この投球フォームの改造についてはチーム内にも賛否両論があったが、梨田監督は故・小林コーチの今季からの一軍昇格を決めていた。その背後には吉井理人・前一軍投手コーチとの衝突も重なっており、『反乱分子』を遠ざけ、シンパの故・小林コーチを呼び寄せることで自身の発言力を増そうとした。
同じ近鉄出身の吉井コーチと衝突した理由は、以下の通り。
「ひと言で言えば、捕手目線(梨田監督)と投手目線(吉井コーチ)の違いですよ。吉井コーチは攻めていて出してしまった四球は仕方ないとし、梨田監督はその考え方に真っ向から反対でした」(球界関係者)
小林氏の急死後、日本ハム球団内には吉井コーチの一軍再登録を押す声も多かったが、梨田監督が反対した。
「吉井コーチは派閥を作るタイプではありません。一匹狼的なところもある」(同)
どの球団も必ずしも一枚岩ではない。対立した者同士が裏で悪口を言い合ったり、監督やフロント有力者に媚びたりと醜い争いごとが繰り返されている。
「日本ハムは小笠原(道大)のFA退団を引き止めなかったように、ドライなチーム編成を行います。5月GW明け、あるいは交流戦あたりをメドに浮上のきっかけも掴めないようなら…」(前出・同)
梨田監督にも“ドライな措置”を下されるだろう。そのとき、フロントが現場の中核に据えるのは二軍コーチに“左遷”されていた吉井コーチだという。開幕序盤で焦る必要はない。繰り返しになるが、球団フロントは「このままでは…」の危機意識があるから、トレードに動いたのである。
「オフにまとめたトレードにしても、梨田監督が放出に反対した選手がいました。現場コーチスタッフのなかには『放出要員を見誤ったフロントにも責任はある』との声が出ています」(前出・プロ野球OB)
昨季の覇者・日本ハムの亀裂は深刻だ。この手のわだかまりは勝つことで払拭されるのだが…。