「形態模写とは、現代の言葉でいえばものまねの一種といえます。声質を真似るのは声帯模写であり、形態模写は姿や格好を真似るものですね。さらには、声でも形でもなく、いかにもその人が言いそうなことを真似る思想模写というジャンルもありますね。古くはタモリの寺山修司のモノマネなどが該当します。現在活躍中の芸人では、Mr.Childrenなどのミュージシャンがいかにも歌いそうな内容を披露するマキタスポーツが知られます」(放送作家)
ものまね四天王でいえば、栗田貫一のレパートリーであるルパン三世や細川たかしなどは声帯模写、コロッケの美川憲一や岩崎宏美、森進一などの顔芸を生かしたものまねは形態模写に該当する。清水アキラやビジーフォーには双方の要素がある。
さらに、ものまねのジャンルの整理するにあたっては、プロレスラーのアントニオ猪木の例もわかりやすい。
「元祖猪木芸人といえる春一番(故人)は、声質を真似る声帯模写のジャンルといえます。一方で、西口プロレス所属のアントニオ小猪木は、猪木の姿格好を真似る形態模写です。さらに、アントキの猪木は、顔つきがもともと猪木と似ているため形態模写とともに『そっくりさん』に属するといえるでしょう。同じ猪木芸であっても微妙にジャンルが異なるのです」(前出・同)
ものまね芸は、古くは動物の声真似などにはじまり、江戸時代には歌舞伎役者の姿を真似る形態模写芸も存在した。歴史あるジャンルに名を残した翠みち代さんのご冥福をお祈りしたい。