「芸能文化方面の新しい名前としては、三枝師匠以外にもベテラン芸人のN氏やH教授の名前も出ていますが、やはり一人だけ大物をとなると三枝師匠になるでしょうね」(同)
三枝といえば、今や押しも押されもせぬ上方落語会の大立て者。落語家としての人気もさることながら、上方落語協会会長として長年の悲願であった落語の定席『天満天神繁昌亭』を実現させ、政治手腕にも定評がある。政界に関しても、横山ノック氏(元大阪府知事)や、西川きよし氏(元参議院議員)らの影響で関心を示しているといわれ、ここ数年は選挙の度に名前が挙がっていた。
「特に'10年の参議院選挙では、自民、民主の両党からアプローチを受け、決断する一歩手前までいきました。しかし、当時の政局と、弟子である桂きん枝が出馬した関係で断念に至ったという経緯があります」(前出・スポーツ紙記者)
とはいえ、今年7月、三枝は『六代目・桂文枝』の襲名という生涯最高の一大イベントが控えているため、選挙どころではない、というのが自然な見方。
所属の吉本興業関係者も、「文枝襲名の現時点ではありえない話。我々もそんな話は何も聞いていません」と語る。
しかし、襲名行事が一段落した来年以降の話となればどうか。元府議会議員はこう見る。
「維新の会が文枝襲名を頭に置いて三枝師匠を口説いているとしたら、意味するものは何か。それは維新の会が、政局は来年、衆参同一で動くという判断をしているということ。おそらく小沢さんあたりからの情報でしょう。来年なら三枝師匠も動きやすいでしょうから可能性は有りです」
上方落語協会の会長職、文枝襲名と、落語家としては最高位を極めたと言ってもよい三枝。新しい活躍の場を政治に求めたとしても不思議ではない。
加えて、『ワッハ上方』の存廃問題以来、溝が生じたままの吉本興業と大阪府の関係、さらには昨年の“大阪秋の陣”を巡る、維新の会と落語界の対立の修復役として“三枝出馬”が期待されているという見方もある。
「三枝師匠は大阪最後のビッグネーム。選挙に関しては、維新の会以外に、自民、民主もアプローチしているという話を聞いています。しかし、自民にはあまり関心がなく、民主にはきん枝出馬の際の党内分裂に対する不信感があるので可能性としてはどうか。きっちり計算のできる人ですから、出るなら維新の会ということになるでしょう」(前出・府政記者)
今回、三枝本人からは国政に対する気持ちを聞くことはできなかった。しかし、一門の関係者からは次のような話が聞こえてきた。
「維新の会の方から、軽〜い調子で意向を尋ねるような話があったんは事実です。今は、我々が『こういうお話がありまっせ』ということを師匠のお耳に入れた、まっ、そんなところです。師匠は笑って聞き流してはったそうですが、いつもそんな調子ですから、これから先どうなることやら」
6月1日に襲名挨拶で大阪府庁を訪れ、松井府知事に対し「大阪を元気にする上で、少しでもお役に立てれば」と挨拶した三枝。維新の会の「いらっしゃ〜い」のアプローチにどう答えるのか?