さて、そのキャバ嬢もそうですが、イベントがあるときか、強制同伴日で客が見つからないときにしか電話をしてこない嬢がいますよね? 最初の数回はいいのですが、何度も断っているのに、ダメ元で電話があるのは、「あなたの誘いは断りますよ」というメッセージを読み取れず、学習ができていないのでしょうか?
あるとき、こんな電話がかかってきました。
「明日は、水着デーなの。よかったら来て」
「え? 水着? あの店でそんなのしかことないよね?」
「うん。必死みたい。最近、お客の入りが悪いから」
「そうなんだ。ほんと、必死だね」
「いつくるの? なんか、こんな電話ばかりして、もう何か月も、いや何年も会ってないような気がするんですけど」
こんな台詞の電話ばかりなんですが、普通のキャバ嬢なら、もう私との関係は切り捨てるはずです。私はもう切り捨てている気分なんですが、なかなか切り捨ててくれないようです。なぜ、切り捨ててくれないのでしょうか? というか、まだキャバクラ嬢を続けるのか、という感覚もあります。
それにくらべて、イベントでもなく、強制同伴日でもないのに、一緒に飲みたくなったり、顔を見たくなり、私から会いたくなるキャバ嬢が最近、います。特別、可愛いわけでもなく、特別、エロでもない。サービスが過剰でもなく、どちらかといえば、必死に営業をしていないのですが、存在するだけで私の心を癒してくれる不思議な存在です。
でも、最近、あまり店には入っていないようです。先日も、次にいつごろ、出勤するのかを聞いたところ、メールでこう返ってきました。
<返事が遅れてごめんさい。最近は、出勤の予定がないのです。いろいろ忙しくて。でも、予定が入ったら、連絡させてください>
そっけない、ありがちなメールです。通常なら、こんなメールが来たら、「もう、いいや」って思ってしまい、ターゲットを変えてしまうんですが、このようなメールが来ても、「この嬢がいないのなら、その店には行かないでおこう」と思ってしまうのです。
なぜなんでしょう。私のタイプの女性だから? いや、違うのです。個人的に好きになるようなタイプの女性とは違うのです。それなのに、気になるのです。だからこそ、会えないのは余計に切ないのです。キャバ嬢に対して、こんな風に思ったのは何年ぶりでしょうか?
<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。
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