そして、入院先ではめまい発作を抑えるために、重曹(炭酸ナトリウム)を点滴注射したり、嘔吐を抑える鎮吐薬や緊張や不安をやわらげるための抗不安薬などを投与するという。
通常はめまいを解消する抗めまい薬、精神を安定させ、吐き気などを抑える抗ヒスタミン薬、抗不安、抗うつ薬などが用いられる。
東北の大学病院・めまい外来(耳鼻咽喉科)で治療に当たっていた篠原准弛医師は「めまい症の早期受診に越したことはありませんが、大切なのは同時に持病の有無を伝えることです」と言う。
めまい症のほか、耳鳴り・難聴は、糖尿病や高血圧、動脈硬化などの慢性疾患が原因となる可能性があるため、持病の有無をはっきりと告げることが大事だ。
とくに手足や顔面のマヒ、意識障害などが伴うめまいは、耳の病気では考えられない緊急性の高いめまいといわれ、糖尿病や高血圧の人のめまいは要注意と専門家は口を揃える。
従って、めまい症状の裏に隠れた病気をさぐる場合は、〈どんな時に起きたか〉〈どんなめまいか〉〈めまいの持続時間はどれくらいか〉〈ほかに症状を伴わないか〉などの問診が非常に重要だという。
「回転性めまい」にしても、発症の頻度が多いのがメニエール病や前庭神経炎などの病歴がある人に多いといわれるが、内耳の病気でめまいの表れ方に違いがあり、それぞれ特徴があるという。
こうしためまいや耳鳴りを未然に防ぐには、何か手立てがあるのだろうか。
ある脳神経外科のベテラン医師は、こんな話をする。
「すべての耳鳴りとか、めまいなどが何の前触れもなく突然起こるとは考えにくいので、どんな状況で発作が起こりやすいか、統計的に判断できることもあります。たとえば、疲れが溜まるとめまいが起きやすいとか、低気圧が近づくとめまいが多い、症状が出やすいといったように…。原因や誘因が、治療前にある程度わかればいろいろな対策を講じることが可能になり、手当もしやすくなります」
つまり、疲労やストレスが引き金になりやすいとなれば、疲れやストレスを溜めない生活をすることが一番いいことになる。
また、気圧や天候の変化が関係しているようなら、天気予報などをチェックし、天候の変わり目には、仕事や外出を早めに切り上げ、心身の負担を軽くすることも大事になってくる。
医師に処方された応急用の抗めまい薬にしても、めまいが起こりそうになる前に服用すれば予防になり、症状を軽減できる可能性もある。
また、体を自己管理する上で、いつどのような状況で発作が起きたかを記す“めまい日記”などがあると役立つ、と専門家はアドバイスしている。
前出の篠原医師によれば「めまい症には“慣れ”も生じる」という。患者の中には「めまいがだんだん軽くなってきた」という人が何人もいるそうだ。
めまいの強さは実際には変わらないが、“平衡機能”を強化するリハビリも効果がある。
目を動かして行うものから頭を動かすもの、立った姿勢で、あるいは寝た姿勢から起き上がったり、歩いたりしながら行うものがあるという。
こうしたリハビリテーションを行うことで、内耳性めまいのメニエール病、前庭神経炎などに有効だという。平衡機能を鍛えて、めまい症を改善させるためにもぜひ取り組みたい。近くの病院や耳鼻咽喉科医で予防・改善策などを相談してみてはどうだろうか。