大阪市都島区の市立・桜宮高校で起きた生徒自殺事件は、発端となった教師の体罰を巡り、教育現場のいきすぎた実態とそのあり方が改めて問われようとしている。
大阪市立桜宮高校の男子バスケットボール部で主将を務めていた2年の男子生徒(17)が、顧問のA教諭(47)から受けた“体罰”を苦に、自宅で首を吊って自殺したのは、昨年12月23日のことだった。
もともと同生徒は、自殺の5日前に、口から血を流して帰宅。不審に思った家族に対し「練習試合の際にA教諭に10回ほど顔をたたかれた」と漏らしていたという。
また、翌日の練習試合後、体罰の有無を尋ねる母親に「試合中も含めて、30〜40回殴られた」「キャプテンを辞めたい」などと吐露。これを受けた母親はキャプテン交代も含め、A教諭と話し合いをもったが、結論の出ないまま悲劇を迎えてしまったのである。
地元紙記者がこう語る。
「自殺した生徒の顔は、殴打のためか無惨に変形していました。また生前、生徒がA教諭に宛てた手紙には『なぐられ、つらい』とA教諭による体罰を示唆した悲惨な記述もあった。そのため『これは指導か? 体罰か?』と迫る遺族に対し、さすがのA教諭も体罰を認めざるを得なかったのです」(地元紙・記者)
悲劇の舞台となった大阪市立桜宮高校は、公立校には珍しく体育科が設置され、矢野燿大(元阪神)をはじめとする優秀なアスリートを輩出している。それだけに、運動部での厳しい指導には定評があり、体罰についても「許容範囲は広かった」(ある卒業生)との声もあるのだ。
中でもバスケットボール部は全国大会の常連で、A教諭は18年間にわたって顧問を務める傍ら、全日本のコーチにも選ばれるなど、その実績は校内外に鳴り響いていたという。そのためか、生徒からの評判も決して悪いものではなかったのだ。在校生がこう話す。
「ちょっと熱くなることはあったけど、怒る時にはなんで怒ったかを説明する、スジの通った先生でした。だから先生の言うことは素直に聞けました」
また、前出の卒業生は「A先生は教育者としても人格者で、いつも生徒目線で指導していた。だから、彼を慕って桜宮を目指す生徒も少なくないのです」と語った。そこからは、青春ドラマにでも出てきそうな熱血教師ぶりが窺えるが、その一方、体罰を含めた“行きすぎた指導”の噂も絶えなかったのである。
「実は、一昨年9月にも『体格の良い男性教諭が、子どもたちに体罰を加えている』『逆らうと退学させられると泣き寝入りしている』などと、A教諭の体罰を示唆する告発が大阪市に寄せられていたのです」(前出・地元紙記者)