「黒田を見たいと思うファンも多かった。でも、昨年の球宴登板が黒田の肉体的負担になったことも事実です。『監督推薦から外してくれ』とは言わず、登板予定日を伝えることで、そう仕向けたんです」(同)
指揮官2年目で、緒方監督もしたたかになっていた。
「黒田は自分が主役になるのはイヤみたいです。あくまでもチームに尽くす考えで、早く200勝を達成し、マスコミの喧騒を終わらせたいと思っています」(前出・スポーツ紙記者)
前半戦好調の要因は、『打線爆発』と『黒田効果』。黒田の速球に往年のスピードはないが、駆け引きでは凄味を増している。内外角に変化球を投げ分ける投球術が、広島が苦手とした交流戦の戦い方も変えた。
「セ・リーグの打者は変化球を捉える傾向が強く、パ・リーグの打者は外角球を踏み込んでフルスイングするイメージです。内角に変化球を投げ込む黒田の投球術に捕手の石原慶幸が覚醒し、若手投手にもどんどん内角球を要求していました。これが交流戦を勝ち越し、独走の足場固めに繋がりました」(スポーツライター・飯山満氏)
緒方監督は打線に“つなぐ意識”も徹底させた。
「レフト方向への安打が多かった菊池涼介ですが、今年は安打の半分以上が右方向です」(飯山氏)
ちなみに1番・田中広輔の出塁率は3割8分4厘。2番・菊池の右方向へ打球が飛ぶ割合は、52.3%。3番・丸佳浩の打点はチーム2位の56。一発のあるエルドレッド、安打数の多いルナ、そしてチームトップの打点を稼ぐ新井と続く打線を、緒方監督は構築した(前半戦終了時点)。田中、菊池、丸の3人が活躍できる打線編成は、緒方監督のお手柄と言っていい。
「黒田はエース。主力の姿を、自身の背中で後輩たちに伝えようとしています。200勝達成時は派手なガッツポーズは取らないでしょうが、優勝と同じくらい、チームは盛り上がるはず」(前出・球界関係者)
2位巨人以下の勝率は、5割を切っている。黒田が後半戦の斬り込み隊長となれば、8月中の胴上げも見えてくる。メークドラマのリベンジ、25年ぶりのリーグ優勝('91年)は、男気・黒田の力投によって果たされる。