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欠陥マンション続出が証明する ゼネコンの救い難い病根

 一時は破綻の危機にさらされていた建設業界だが、東北復興に加え、東京オリンピック特需への期待は膨らむばかり。消費増税前の駆け込み需要を見越した空前のマンション建設ラッシュも重なり、ゼネコン各社は待望の春を謳歌している。

 そんな状況で直撃したのが、相次ぐ“欠陥マンション”騒動だ。2月初めには鹿島建設が施工し、三菱地所レジデンスが販売した東京・港区のマンション『ザ・パークハウス グラン南青山高樹町』で「本来は絶対にあり得ないズサン工事」(建設アナリスト)がインターネットの書き込みから発覚した。
 このマンションは最高価格3億5000万円、最多価格帯1億4000万円の“億ション”だが、配管を通すためのスリーブと呼ばれる穴を6000カ所開けるよう設計されていたにもかかわらず、1割に当たる約600カ所で開けられていないか、位置が間違っていた。慌てて穴を開けた結果、鉄筋を切断するケースさえあったという。
 お粗末極まりないことから3月20日に迫っていた引き渡しを中止した揚げ句、新たに建て替えることになった。契約者には『迷惑料』として手付金を倍返しして解約、その額は約25億円にも上る。物件を取り壊すにも巨額の費用が掛かることから「三菱地所と施工会社の鹿島建設、問題のスリーブを請け負った関電工が負担をどう分け合うかが今後の焦点になる」と、前出の建設アナリストは指摘する。

 次いで大成建設が施工し、積水ハウスが販売する東京・港区の『グランドメゾン白金の杜 ザ・タワー』でも欠陥工事が発覚した。地上30階の建物を支えるコンクリートの柱34本のうち19本で補強筋と呼ばれる鉄筋が一部抜け落ちていたことが大成建設の検査で判明、2月から新たに鉄筋を入れる作業に入った。引き渡しは予定通り来年7月の見通し。こちらは総戸数334戸の大規模マンションで、最高価格は3億5900万円、最多価格帯は8900万円と、これまた高級マンションだ。

 それにしても鹿島といい大成といい、日本のゼネコンを代表する両社が手掛ける億ションで、堂々と“手抜き工事”が見過ごされたのは何を物語るのか。
 「現場監督が緊張感を持って目を光らせ、部下に設計図と工事の進捗状況をチェックさせれば未然に防げたはずです。それができなかったのは、マンションの建設ラッシュで突貫工事に走ったか、現場監督の管理能力に問題があったかのどちらかでしょう。加えて最近は人手不足が深刻で、東京・大手町のビル建築現場では、高給をエサに北海道や沖縄などから経験不足の若者をかき集めたほど。監督が彼らに対する目配りを怠ったら、どんなシロモノになるかは明らかでしょう」(大手ゼネコンOB)

 民需の象徴ともいうべきマンション工事は、官公庁発注の公共工事に比べると価格交渉が厳しい。そのため「マンションはもうからない」が定説。勢い手抜き工事がまかり通る構造だ。前出の建設アナリストは「鹿島、大成はたまたま表面化したまで。他社だって実態は同じようなもの」と切って捨てる。

 厄介なのは震災復興や東京五輪に向けたインフラ整備が加速するのに伴い、資材高と一層の人手不足が深刻化することだ。需給の論理で給料アップ=労務費高騰を招く。この穴埋めを誘発しやすいのがマンション工事なのである。
 「今回、白金でミソをつけた大成建設は、東京五輪のメーン会場となる新国立競技場の受注に意欲を燃やしている。当初3000億円とされた建設費が削減されるにせよ、現在の国立競技場で元請けだったからです。大成は建築と土木が確執し合っているため『建築部門はライバルよりも、土木部門の鼻を明かそうとシャカリキになって受注作戦を展開するに違いない』ともっぱらの評判なのです」(ライバル社役員)

 昨年9月、2020年の東京五輪が決まった際、「これで東京近辺のインフラ工事が急ピッチで進む反面、東北の復興が遅れる」との懸念が浮上した。東京にヒト、モノが集中すれば「東北が忘れ去られる」との見立てである。
 「ゼネコンはバブル崩壊で大型リストラを余儀なくされた。そのため新卒の採用を手控え、優秀な若手技術者が育っていない。ここへ来て中途採用にかじを切ったとはいえ、現場を束ねられる人材がどれだけいるかとなると怪しい限りです。その脈絡で捉えると鹿島、大成が見せ付けた醜態も、さもありなんと思えてきます」(前出のゼネコンOB)

 今や福島原発事故の後始末で東京電力が天下に無能をさらけ出している。五輪後の反動を含め、厄介な火種を抱えるゼネコンに、果たして東電を嗤う資格があるのだろうか。

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