東京オリンピックで野球・ソフトボールが追加競技として行われることが決定した。8月3日、リオデジャネイロで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)での決議を知らされた際、NPB関係者は一様に喜んだが、本当の戦いはこれからだという。
「野球・ソフトの最終目標は“公式種目”として五輪に復活すること。東京の次大会ではまた新たに追加競技を決め直します。野球・ソフトは、もっとアピールしないといけません」(スポーツライター・飯山満氏)
まだ具体的な話し合いは始まっていないが、「東京五輪を戦う侍ジャパンは、今以上に魅力のあるチームにしなければならない」とのことで一致している。
「侍ジャパンを指揮している小久保裕紀監督の任期は、来春行われる第4回WBCまで。現時点では小久保監督の続投を含め、後任は白紙状態です」(球界関係者)
小久保監督が今年11月の国際親善試合で日本人メジャーリーガーの招集を示唆したのも、魅力あるチームにするためだ。
「第5回WBCは'21年です。小久保監督が続投するにしても、『次の第5回大会まで託す』という任期になるでしょう」(同)
そこで急浮上してきたのが、東京五輪を戦うチームと、常設された侍ジャパンを分けて考えるプラン。第4回WBC後の次期代表監督にも4年の任期を託す。しかし、東京五輪を戦うチームの監督と、常設侍ジャパンの監督が異なってもいいのでは、というのだ。
先の球界関係者は「具体的な話し合いはこれから」と前置きしつつも、NPB内には「東京五輪の野球チームを盛り上げたい」とし、各要人が何人かの大物OBの名前を出し始めたという。
「日本の野球ファンは、誰が監督になるかで感心の持ち方が違ってきます。本命というか、希望はイチローです。ただ、4年後、47歳のイチローはまだ現役を続けている可能性もある。そうなると、ゴジラ松井(秀喜)か黒田博樹。代表監督経験者の原辰徳氏や前広島監督の野村謙二郎氏も候補に入っていますが…」(同)
野球・ソフトの当選後、長嶋茂雄氏が「ありがとう!」と、ファンにお礼を伝えるPRコマーシャルも放送された。巨人の終身名誉監督でもある長嶋氏も東京五輪への協力は惜しまない。コミッショナー特別顧問で、再選定の最終審議でも尽力した王貞治氏にも相談。長嶋氏、王氏が納得する人物となれば、もはや松井秀喜氏しかいない。
「松井氏は原監督の次の巨人指揮官候補でした。若いヨシノブ(高橋)が選ばれたことで、当面、その話は出ないでしょう。しかし、松井もヨシノブも長嶋氏にとっては可愛い存在。長嶋氏は自身の経験から、いきなり監督になるより、コーチか二軍監督を経験したほうがいいという持論のようなものを持っています。兼任コーチの経験しかないヨシノブのことを非常に心配していました」(ベテラン記者)
「監督就任前にワンクッション置く」という考えは中畑、原氏の時代にもあった。
「'04年のアテネ五輪で何事もなければ、野球の日本代表は長嶋氏が指揮するはずでした。当時、長嶋氏は『勉強しろ』という意味で、江川卓氏にもコーチ入閣の打診をしていました。江川氏の『中間管理職のコーチ業はやりたくない』の持論も知っていて、『オレの下でならいいだろ?』と…。これは実現しませんでしたが、松井に勉強させる機会を与えるため、東京五輪代表チームの指揮官を委ねようとしています」(前出・関係者)
松井氏も巨人の監督でなければ、監督業にも抵抗はないだろう。また、松井氏には“負い目”もある。それは第1、2回のWBCの代表招集を辞退していること。当時所属していたヤンキースが強いプロテクトを掛けたためだが、五輪監督を引き受ければ、そのときの借りも清算できる。
「長嶋氏もアテネ五輪に参加できなかったことが心残りなはず。日本中が応援できるドリームチームを作るのなら、『長嶋総監督-ゴジラ松井監督』しかない」(前出・ベテラン記者)
また、読売グループも『長嶋総監督-ゴジラ松井監督』をプッシュするはずだ。近年、代表入りする巨人選手が少なくなっている。生え抜きの野手が少ないためだが、『長嶋-松井』コンビとなれば“期待”が持てる。
「野球・ソフトに参加するのは、日本を含め6カ国です。1勝すればメダル獲得ですよ。野球は追加種目に決まりましたが、東京大会後のことなど、今後の課題が多すぎる。現侍ジャパンを見ても、小久保監督は12球団の主力を借りる引け目というか、無理させられないジレンマにも苦しんでいます。これまで目を逸らしてきた問題を解決するには、長嶋氏に一肌脱いでもらうしかない」(NPB関係者)
松井氏は今も野球の本場・アメリカで影響力を持っていて、ニューヨークにもファンが多いという。
「米球界の日本人グループのドンは、今も長谷川滋利氏(元マリナーズほか)です」(米国人ライター)
コーチで長谷川氏が松井氏を支えるとなれば、米メディアも放っては置かないだろう。日本中に夢を与えられ、世界にもアピールできるチーム、WBCと東京五輪を切り離したプランが目下、進められている。